第20話

「ああっ!」


バランスを崩し、そこに追い打ちをかけるように後続の人たちに当たり、離れていく。


「せ、せんぱ…」


「ヒルダ!」


助けを求めるように伸ばす手を、俺は人混みをかき分けながら追いかけ掴もうとする。しかしなかなか届かない。


そうしているうちに、ヒルダは誰かの足に引っ掛かったのか今度は倒れそうになる。


こんな場所で倒れたら…!


「ヒルダ――っ!」


周りを気にせず叫んだ。周囲は驚いて足を止める。ヒルダはそれに答えるように、


「―先輩っ」


すると、ふと彼女の前に魔法陣が浮かび上がり、そのおかげで転倒は免れ、そしてまばゆい光に周囲は彼女から離れる。

近づいたのはトライハルトだった。


「ヒルダ、無事か?」


「…はい」


彼女の胸辺りから出ている心剣をしまい、優しく抱き止める。


「あの…ありがとうございます…」


「いや、すまなかった」


「あの…」


ヒルダは呆然としている周囲に視線を送る。


それは俺も気づいていた、だが…。


「もう少し、このままで」

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