第16話

屋台がある場所では、ソウマは天下だった。


「よおっし!これやろうぜ!」


「らっしゃい!……と、ソウマたちか。1回やっていけ」


はじめは射的。ここの店主はロウエンだった。


「これ何?本物の銃?」


「いいや。これは安全な弾を詰めてるんだ。

んで、先にある景品に当てて倒せばいいんだ」


エルウィンが銃を手に取りながら訊ねると、ソウマは答えた。


「一回いくらだ?」


「30Gだ」




「おし。じゃあトライハルト勝負しようぜ!」


「なぜ俺が…」


「なあ、ヒルダ。なんか欲しいものあるか?」


「え?」


トライハルトが断ろうとすると、ソウマはいきなりヒルダに話を振った。


「では…あのちいさなクマのぬいぐるみを…」


彼女は少し迷ってから答えた。


「んじゃ、取ってやるよ!」


「いいなぁ~っ」


「ソウマ!次はアタシにもね?!」


エルウィンとマオのねだりに、「わかったわかった」と言ってなだめ、ソウマは銃を構え、狙いを定める。そして引き金を引いた。


パン。

パンっ。


クマのぬいぐるみとは違うものを当たった。しかし、それも落ちた。


「あーあ、外れちまったな。でも良かったな、ヒルダ」


ぬいぐるみを当てたのはトライハルト。


「は、はい…ありがとうございます。先輩…」


「ソウマ…」


あの発言は明らかにソウマの挑発だった。それにまんまと俺は乗ってしまったんだ。


ソウマからヒルダにぬいぐるみを渡すシーンを想像してしまったせいかもしれない。


「ほらよ、嬢ちゃん」


「え?あ、はい。ありがとうございます…」


『………』


だが、手渡したのはロウエン。それはソウマも俺も予想外だった。

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