第6話

式よりも、本当の母親の方が気がかりだった。



西園寺コンツェルンの跡継ぎよりも、そちらの方がずっと。



リーベリアに安定が戻ることが、母親に繋がることだから。



様子を見に会いに行きたかったが、今はその気持ちを抑えた。



「……ソウマが来たら行くぞ」



「はい。

…………それじゃあ、その前に…」



「ん?

どうした、ヒルダ」



「あの

先輩……

卒業…おめでとうございます!」



ずっと後ろ手にしていた彼女の手には、オレンジ色に近い黄色い花束を、控えめに俺の前に差し出した。



「式に使われる花とは違うんですけれど……渡したくて…」



前に教えてくれたことがあったな…たしか名前は…






花束を受け取って気づいたが、彼女の白い頬が赤く染まっていた。


「…ありがとう」



そう言うと、目を潤ませて「良かった…」と嬉しそうに微笑んでいた。


蒼真たちが来るまでの、穏やかな時がここには流れていた。

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