第6話
式よりも、本当の母親の方が気がかりだった。
西園寺コンツェルンの跡継ぎよりも、そちらの方がずっと。
リーベリアに安定が戻ることが、母親に繋がることだから。
様子を見に会いに行きたかったが、今はその気持ちを抑えた。
「……ソウマが来たら行くぞ」
「はい。
…………それじゃあ、その前に…」
「ん?
どうした、ヒルダ」
「あの
先輩……
卒業…おめでとうございます!」
ずっと後ろ手にしていた彼女の手には、オレンジ色に近い黄色い花束を、控えめに俺の前に差し出した。
「式に使われる花とは違うんですけれど……渡したくて…」
前に教えてくれたことがあったな…たしか名前は…
花束を受け取って気づいたが、彼女の白い頬が赤く染まっていた。
「…ありがとう」
そう言うと、目を潤ませて「良かった…」と嬉しそうに微笑んでいた。
蒼真たちが来るまでの、穏やかな時がここには流れていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます