第5話

◆春人編◆






俺は桜の木にもたれながら三日月の池を眺めていた。



サク、サク。



誰かが近づいてくる足音。顔を少し横に向けて確認した。



「先輩…。やっぱりここにいたんですね」



「ヒルダ…」



やわらかく微笑みながら、一歩一歩歩み寄り、少し距離を空けたところで彼女は足を止めた。



「卒業式、参加しないんですか?」



少し遠い場所から、ピアノの音が聴こえてきた。



物思いにふけていて、いつの間にかこんなに時間が経っていたのか…。



“仰げば尊し”を歌う声が聴こえる。

式はもう佳境だった。



本当は卒業式に参加するということで、一時的に帰ってきたのだが(ソウマの半ば強制)、



「…まだリーベリアの事が片付いていない。

式に参加してしまうと帰ってきていることが分かってしまう。



…二度とリーベリアに行けなくなるかもしれないからな」

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