第3話

「人徳…?」


ちょっと冗談のつもりで言ってみたら、


「それはないわ」

「それはないだろ」


椎名と霧谷の息の合ったツッコミに、


「そんなハッキリ言わなくたって…」


落ち込む蒼真。


「ふふ…っ」


その様子を見ていた呉羽が微笑みながら笑うと、


「く、クレハ…」


彼はますます落ち込んだ。


「あ…、

違うのよソウマくん」


「?」


「人徳かどうかはわからないけど、理事長―――お母さんのお陰なのよ。」


約一年前、はじめて間近で見た理事長の顔は、クレハをそのまま大人にした感じだ。

しゃべり方は何となく好きな方ではなかった記憶があるな。


「へぇ~じゃあ留年させるなんて惜しいと、そう思ってくれたんだな?」


「そうかもしれないわ」


呉羽は裏のない笑顔を見せた。


くぁ~~っ!

こっちに無理言って帰ってきてよかったぜぇ!


このクレハの顔が見たかったために帰ってきたようなもんだしな。

ホント、帰ってきてよかったぜ!

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