第2話
(正直、王妃やガシェー王の都合だけで決められたこの婚姻に期待していた訳じゃない)
(見ず知らずの俺をいきなり好きになれなんて言うつもりもないし………)
(慣れない異国の地に着いた途端に結婚式だし、嫌になるのも分かる)
(けれどこうもあからさまに怯えられてしまうと、こちらとしてもどう接すればいいのか分からない………)
◇◇◇
離れにある神殿はマトハル国が信仰するザーハブ神の像が祀られている。
ザーハブはこのマトハル国に富と栄誉を齎した絶体神で…それは美しい顔をした男神で全身が黄金で塗り固められている。
そのため派手な物を好まないザイードには特に苦手な偶像だった。
しかし神殿を置くには必ずこの神の像を建てるという決まりがあるため、宮殿の建設当初からここに置かれていた。
太い数本の円柱がこの神々しい石造の神殿を支え、その奥に本殿と回廊そして中庭がある。
そこには色とりどりの南国の花が咲いており、来賓客の目を楽しませてくれた。
回廊には特産品の絨毯が敷かれ…隅には歓迎を意味するマトハルの国旗が掲げてあった。
式はこの神殿に呼ばれたマトハルの王宮の神官長によって進行する予定だ。
なお今回の式は花嫁の意思を汲んで派手にしないという理由から、国王や王妃…貴族諸侯の参席は控えてもらった。
むしろ彼らも、王位継承から程遠い第3王子であるザイードの式に参加する意味などないから、返って好都合なはずだ。
…それについてはザイード自身も、それで良いと考えていた。
花嫁とは違う神殿の控室にて使用人達に正装の準備を任せたのち。
扉を開けたザイードの目に飛び込んできたのはやはり…この世のものとは思えない美しさをした花嫁の姿だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます