第2話

 純白のドレスに包まれた花嫁に、またもザイードは目を奪われた。

 決して派手というわけではない。

 とてもシンプルなデザインで、肩についたレース飾りの下からは、ナーディアの白い肌が惜し気もなく露見していた。

 

 程よく痩せた身体にぴたりと張り付いたドレスは、くびれた腰をいっそう強調している。

 ベールの下の薄茶色のふわりとした髪には、この国にしか咲かないアエテルヌムの白花と葉と茎が、織り交ぜられるように飾り付けられていた。

 

 (きっとアメナのアイデアだろう)


 (うん…派手な装飾や宝石で飾り付けられるよりはこっちの方が断然いい)

 

 宝石と言えばたった一つ、ザイードが事前に準備したサファイアの青いネックレスだけが鎖骨の浮いた首に掛けられていた。

 

 本殿の扉前で待たされている間、ナーディアの目線はずっと彷徨うように下を向いていた。

 隣同士肩を並べていたがその距離は程よく遠い。

 緊張というよりザイードの隣に立っているだけでその顔は強張っていた。

 

 (綺麗ですと………

 そう言える雰囲気でもないな)

 

 (理由がよく分からない…

 これだけ警戒されるとこちらも対応に困る)

 

 (だが今の俺にできるのは向こうが怖がらないように十分配慮するだけ)


 「合図です。…では行きましょう。ナーディア姫。」


 「入場」の掛け声がしてザイードは、ナーディアの手をあまり強く握らないように意識し、開けられた扉の中に入っていった。

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