第2話

 (……何と真っ白な肌なんだろう)


 (マトハルと似たようなガシェーの砂漠の地で、これまで日にも焼けずどうやって生きてきたのだ?)


 (ずっとハレムに居たから?)


 「ザイード…殿下?」


 はっとザイードは声に反応して正気に戻る。

 というより目の前のその人によって正気を失っていたという事に驚く。

 今、まさにザイードは例の花嫁と初対面したばかりである。


 透明感のある白い肌。

 紫のアメジスト色をした美しい両目の瞳。

 肌の美しさを強調させるかのように薄い赤色をした頬。

 サーモンピンク色の唇。

 他は全てストールや分厚い衣装に包まれて見えないけれど。

 というのも砂漠地帯で女性は他人に素肌を見せてはならないという暗黙のルールが存在している。

 しかしこのマタルではザイードが町民に自由な服装を許可している。

 だから町に住む女性は思い思いの服装をしており…特にこんがり日に焼けた女性が多い。

 

 なので第一印象はただ。ただ儚い。

 それだけであり…それだけでザイードの正気を失わせるほどに強烈な印象だった。


 「ああ、すまない。」


 形式的な挨拶を済ませてザイードは平静を保つよう努力した。

 応接間には使用人が複数人と宮殿周りに兵の配備を整え終えたアクラムが控えている。


 「ザイード殿下。お初にお目に掛かります。

 ナーディアと申します。」


 ナーディアは美しい所作でお辞儀をした。

 

 (ガシェー国では厳しく礼儀作法を叩き込まれたのだろう)


 もはや存在が伝説とまで言われていたゲシュム一族の姫。

 元々は北国の寒い国で生まれたのが一族の始まりだそうだ。

 色白で儚げ。美しい容姿をしているのが特徴だというが…まさにその通りだった。


 「初めまして。ナーディア姫。

 俺はこの国の第3王子で、この国境地帯を治めているザイードです。

 今日から宜しくお願いしますね。」

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