第2話

(予定ではまだ一刻以上先だったが)


 (ガシェー王はそんなに早く花嫁を送りたかったのか)


 諸々腑に落ちない点を飲み込みながら、ザイードは男の使用人を呼び、湯浴みの手伝いをするように告げた。

 

 また、アクラムも駱駝を厩舎に戻すと、すぐさまザイードの護衛を務める部下らと式中の兵の配備などについて最終確認を始めた。


 実は——この宮殿では何と2か月も前から、その花嫁を迎えるために着々と準備を行なってきた。

 いくら悪い噂があっても王子の花嫁に対する敬意はきちんと払わなければならない。

 また…そうする事が当然だというザイードの意向でもある。

 それに何より両国の親交のためでもある。


 しかも輿入れ当日に式を挙げろという無茶振りが、王妃からの馬鹿げた要望なのだ。


 だから隣国から慣れない国にやって来る花嫁に失礼がないように。

 式の間に居心地が悪くないように。

 式の後などゆっくり休めるように。

 花嫁の部屋を清潔に保ち、新品のシーツや枕などを取り揃えてベッドメイクさせ、不便がないよう様々な物を用意させた。

 

 式場についても、花嫁があまり派手さを望んでないとの意見も事前に聞いていたので、なるべく希望に沿う様にしている。


 様々な噂があるため不安な気持ちもあるが、

不思議と花嫁に会うのにどうしても胸が躍ってしまう。

 そんな自分にザイードは心底驚いてもいた。

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