第1話

 砂よけに巻いていたぶ厚いストールを外しながら、アクラムはザイードの顔を勢い良く覗き込んだ。

 

 一見このアクラムの態度は王族に対し不敬に思える。

 しかし彼らは昔からこの様に気さくな間柄であり、その事についてザイードも了承しているし、それを誰かに咎められる事もなかった。

 

 それに最側近だけあってアクラムは、ザイードよりも少し背が高く、体の線は細いが筋肉質で、剣の腕が立ち、護衛にとても良く向いた逸材であるのは間違いない。

 

 彼が言わんとする事を察したザイードは少し気まずそうに視線を下に落とし———。


 「分かってる。

 これから宮殿に移動しようと思っていたところだ。」


 「ならいいんです!もちろん俺も付き添いますよ。

 しかし、それにしても…」


 ずいぶん溜めてからアクラムは深い溜息と一緒に、思うこと全部吐き出すように言う。


 「本当ですかね?

 今日嫁いで来る殿下の花嫁が…

 あの伝説の一族の姫で、大雨を降らせてガシェー国にひどい水害をもたらしたって話は。」


 そう言った彼の言葉にザイードは片方の眉を吊り上がらせ、ぴくりと反応した。

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