第4話

 元々後宮には側室達を管理する部署は存在していたが、それとは別の、監察局のように不穏分子を監視する特殊な部署の監視官だったとか?

 

 皇帝である雲嵐に悪態つく、後宮の「悪女」と呼ばれた私を監視して、ずっと嫌悪していたのかもしれない。


 それにしても、雲嵐が記憶喪失を患いあの夜の出来事全てを忘れ去ってしまったとは。

 だからあんなに人が変わったような、殺伐とした顔をしていたのだろうか?

 

 とにかく話をまとめると。

 私が死んだ後、他国へ遠征のために出征されていたイェ大将軍とその軍勢が運良く城に戻られ、雲嵐は助かった。

 その後制圧され、逃げ出した雷浩宇をよそに静芳は事実をでっち上げ、再び貴妃の座に戻ったということになる。

 

 しかも雲嵐が記憶を失くしたのをいい事に、いま雲嵐に唯一寵愛されている貴妃として。

 なんて事だ…!

 

 一番危険な人物を皇帝の側に据えるなんて。

 今の宮廷は一体どうなっているのだろう?


 少なくともあの悪女を、雲嵐のそばから引きり下ろさなければいけない事だけは確かだ。


 後から聞いた話によると、雪玲わたしは矢に撃たれて死んだ所までを目撃されたらしいが、その後なぜか遺体は見つからなかったそうだ。

 確かに雲嵐に嫌われるように悪いふりはしていたが、まさかそれを逆手に取られて、史上最悪な後宮の悪女として有名になってたなんて。

 

 ………笑うしかない状況だわ。


 



 「それなら…雪玲妃の父君はどうなったのです?

 確か大尉として宮廷に仕えていたはず…」


 隊舎に行くために私と憂炎は部屋を移動した。

 あの日焼けた朱城が復元され、さらに高い塀となっている。

 城を囲う赤い壁を見上げながら、私は無意識にそれを尋ねていた。

 が…前にいた憂炎が突然立ち止まり、あと一歩のところでその背中に激突するところだった。


 「… 武泰然ウータイランは現在職を解かれて刑部で軟禁されています(※警察のような場所)。

 …が。それがあなたと何の関係があるんですか?」


 「いえ…?何の関係もありませんよぉ?フフっ〜?」


 丁寧な言葉遣いからは考えられない、憂炎の恐ろしい眼光を真正面から受け、その場はただ笑って誤魔化すしかなかった。

 

 「今度おかしな事を言えばあなたを尋問にかけますよ。覚悟しておいて下さいね。」


 「うっ…!はい…」


 まさか…お父様が刑部に軟禁されてるとは!

 娘が罪人と思われてるから?

 それとも静芳様の仕業?

 

 何で死ぬ前より状況が悪化してるの?

 そして何で私転生したの?

 何のために?


 とにかくまずは雲嵐の側にいる静芳様を何とかしないと…!

 それならあの夜の目撃者を探し出す方が早いかもしれない。

 それに軟禁されてるお父様を助ける方法は?

 林杏はどうしてるだろう?

 

 ああ…考えることが多過ぎる!

 これは苦行のための転生だったの!?

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