第3話
…つもりだったのだけれど。
それが。どうしてこうなっているのか。
「そなた、名前は?」
「…
まさか生前の名前は語れないわ、と思い私はとっさにそう名乗る。
目の前には朱国の皇帝がいる。
その皇帝は他の誰でもなく雲嵐だ。
………あれ?
私………死んだはずでは?
とにかくどこから説明したらいいのか。
以前朱国で私が見た創造神の書物では『転生』という概念はあった。
それならば死んだ魂が新しい魂として生まれ変わり、新たな人間として新たな生を歩む。
通りならば私は
いや、確かに零歳ではあった。
しかし、新たな生を歩む速さが尋常ではなかったし。
なんと言ったら良いのか。
気がついたら繭の中にいたと。
気がついたら鳥の羽毛のような
死んだ歳と背格好が変わらないくらい大きくなってしまったのだ。
しかもどういう訳か微妙に違うが微妙に
これはどうやら普通の転生ではないようだ。
だって皇帝は、雲嵐は今23歳だという。
ということは私は死んで転生し、たった一年足らずでここまで成長したということになる。
そんなこと…ある?
それから突然繭から投げ出され、途方に暮れていたところで兵に見つかり、怪しい者として罪人を処罰するこの門の前に引っ張り出された。
目の前にはもう二度と会うこともないと思っていた雲嵐が、人を殺しそうなほど険しい目をしてこちらを
そして何をそう結論づけたのか、雲嵐はちょうど男では気が回らない、戦争などの時に身の回りの些細なことをする女の近衛兵が欲しかったと言い出した。
しかも断れば怪しい者として首を切ると言い切った。
正直言って怖すぎる。
「お前が今から私の手となり足となるなら、お前の命を助けよう。どうだ…?」
どうだと返答を迫る雲嵐は、こちらが転生してたった一年足らずで大きくなった雪玲であるとは思ってもいない様子で淡々と言う。
まあ、分かるはずもないか。
一年前に死んだ、大嫌いな側室の一人がまたこの朱城に舞い戻ってきたなんて誰が思うの?
私だって思わない!
とにかく今はこの殺意剥き出しの雲嵐をどうにかしなければ。
しかしどう考えてもこの状況を脱するには、雲嵐に従う以外の選択肢はなさそう。
仕方なく私は両手を地面につけ、従順なふりをして頭を下げた。
「…はい。この身で良ければ、陛下の手となり足となりましょう。」
「……うむ。」
なぜ転生してまでまた、雲嵐に会わなければいけなかったのか。
そんな事を考える余裕もなく私は、今度は側室としてではなく、雲嵐の身辺を守るための「禁軍」、その中でもより近しい親衛隊として仕える事になったのである——————。
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