あれから俺達は
もちろん、ユースティティアとの交流を忘れた事はない。
回帰後にアドニスがユースティティアを気に入ってる様子が何度か見て取れたので、幼稚ながら邪魔をするのにも必死だった。
アドニスはずっと何も言わなかったが、本当はユースティティアの事を好きだったんじゃないだろうか。
しかし、これだけはどうしても譲れない。
キリクスは、あのハウオリの木の下で出会った時から、ずっとユースティティアを愛してる。
回帰前に傷つけてきた彼女を、今度こそ幸せにしたい。それだけは譲れないと。
それからキリクスは、どうしても気になっていたアドニスの出生について、独自に調べていた。
件は一大事のため、特に周囲に勘付かれない様に気を払った。
そこでキリクスはある恐ろしい事実を知った。
———皇后、イーブルの姦通。
皇帝以外の男と恋仲になったイーブルが、アドニスを妊娠したという事実。
独自に調べた結果は完全に黒。
アドニスはザイン帝国皇帝の本当の息子ではなかった。
皇帝や民、さらにはアドニス本人までも欺いているイーブルには憎悪しか湧かなかった。
しかし、それによってアドニスが皇太子の座を降ろされるのだけは避けたかった。
アドニスが皇帝の血を継いでおらず、キリクスとの血の繋がりがなくても、彼が素晴らしい人だという事実は変わらない。
心優しいアドニスは絶対にこの国に必要な人間だ。皇帝となるべき人だ。
一体誰がアドニスの出生の秘密を暴き出したかは分からない。キリクスはそれが世間に漏れ出さないように裏工作を行なった。
自分の手を染める事は厭わなかった。
それが帝国を欺き、人々を欺いてるとしても構わなかった。
血など大して重要ではない。
大事なのはその人間の持つ器一つなのだから。
キリクスはアドニスの本当の父親である貴族の男に接触し、大金を渡してどこか遠い大陸の地に移り住むように促した。
念のために口封じの魔術を施した。
もしこの事を誰かに告げた時は、その口から破裂し死に至るという恐ろしい魔術を。
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