あれから俺達は
それから両手を組んで、同じように動揺するユースティティアに向かって声を掛ける。
「ユースティティア。もしキリクスじゃなくて私と結婚するなら今のうちだぞ。
なんせ、君は以前まで私の婚約者だったんだからな。」
「兄さ……陛下……!」
アドニスのユースティティアに対する思わぬ誘惑に、キリクスは動揺を隠しきれない。
それは隣にいた彼女もだ。
しかし案外、ユースティティアの方が毅然とした態度でそれを躱した。
「恐れながら陛下。
陛下には今後、私などよりも強力な後ろ盾を持つお方や、高貴な血を持つお方とのご縁が
そんな陛下に、私などでは非常に勿体ないと思います。
ですからその提案はお断りします。
それに……私は」
ちらっとキリクスを伺うユースティティア。
その姿は洗練されていて、まるで天使のようだ。
「キリクス様を愛しておりますので。」
「ユースティティア………」
彼女の美しいブラウンアイが熱く光を放つ。
「はあ。残念だ。
そこで惚気るだけのようなら、謁見はこれで終わらせようか。
それに私のことを振るというのなら、早く式でも挙げて私を納得させてくれよ。」
アドニスは苦笑いした後、2人に下がる様にと手を振った。
ユースティティアとフロアレに手出し無用という誓約書を書かせ、エリス達を断罪してから約8年もの間。
やはりユースティティアは悪女という汚名が綺麗さっぱり注がれて、心の美しい、聖女の様なオプスキュリテの第1皇女としてその名を両国に知らしめた。
そのため、やはりアドニスの婚約者となったままだった。
それでもユースティティアをどうしても諦めきれなかったキリクスは、皇帝である父に嘆願した。
「俺が国1番の魔術師となって功績を挙げたら、ユースティティア様を婚約者にして下さいませ!」
今思うとあの時はかなり必死だった。
「ならばお前が、この世で最も第1皇女に相応しい男だと証明してみせよ。
そうすればアドニスとの婚約を解消し、お前を婚約者に選び直すことも考えてやろう。」
相変わらず皇帝の言い方に愛はなかったが、それでもチャンスがあるのだと思うと我慢できた。
「はい!必ずこのザイン国一の魔術師となり、国に貢献できるよう努力いたします!」
その時の誓い通り、キリクスは魔術師としての修行に励んだ。
剣術や護身術を覚え、政治、経済、歴史を学ぶなど、ありとあらゆることを習得した。
いずれこの帝国の皇帝となる、アドニスの役に立つためでもあった。
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