悪女になったユースティティア
ユースティティアは、ザインの皇后、イーブルについて何か汚点がないかを徹底的に調べ上げた。
エリスに化けさせられている間以外は、それに全神経を注ぎ込んだ。
そして、ついにオプスキュリテの皇后・イーブルの弱点を握った。
それは帝国を揺るがす大事件だった。
なんとイーブルは、皇帝以外の男と姦通し、子供を産んでいた。
その裏付けを取るために、ユースティティアはイーブルと関係を持ったという貴族を、闇ギルドに依頼して探し当て、密かに髪の毛を拝借した。
城ではアドニスの歩いた道筋を念入りに歩き、同じように髪の毛を手に入れた。
自室に戻り、魔法で親子鑑定を開始。
ついにユースティティアは、イーブルが産んだアドニスが、皇帝の子ではなかったという事実を掴んだ。
ザインの第1皇子、アドニスは皇帝の本当の子ではない。
この国での姦通罪は確か死刑だ。
しかもそれが皇后なら、なおさら。
これを証拠に、皇后のイーブルを失脚させればきっと、キリクスの命は救われると信じた。
ユースティティアは事が事だけに慎重に行動し、アドニスと親子関係に当たる人物の毛髪を鑑定済みの証書と共に『皇室司法局』に匿名で転送した。
司法局は国の中枢機関であり、主に犯罪や法を犯した者への言及や、調査、裁判を行う場所である。
被疑者が例え皇室関係者だとしても、公正な調査が行われる事で有名だ。
それからユースティティアは、当時イーブルの護衛官を務めていた初老の男に、金銭と引き換えに王宮にタレ込みをするように依頼した。
そうして用意周到に全ての証拠を揃えると、王宮では激しい裁判が展開。
イーブルは最後まで罪を認めなかったが、激怒した皇帝が皇后の称号を剥奪した。
イーブルはザイン帝国の最北端にある、高い塔に幽閉された。
そこまでは順調だった。
問題は、イーブルの失脚によって、その息子であるアドニスが、皇太子という身分を剥奪され、一皇子に降格した事だった。
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