キリクスとの結婚

 エリスは夜だけはユースティティアに入れ替わりをさせなかった。

 理由は単純だった。


 「私があんな、雑種みたいな皇子と夜を共に過ごすわけないでしょう?」


 キリクスに対する酷い扱いが腹立たしかったが、夜だけはキリスクの側にいることができた。

 それだけでも幸せだった。




 他にもユースティティアは、エリスに化けなくてもよい間、キリクスの為にできる事はないかと探し回った。

 


 使用人に頼んで彼の服を洗濯したり、破れた部分を針と糸で補修したり。

 彼の使う執務室の本棚の並びを整えたり、部屋を綺麗にしたり。



 けれど使用人達は、悪女がやっている事は結局、悪事でしかないと捉える。

 だからやった事は全て歪曲して、キリクスに伝えられた。




 『キリクス様の服に何か仕掛けを施しておいででした。』


 その服は捨てられた。




 『本棚を念入りにチェックしていましたよ。

 もしかして国の機密事項でも盗もうとなさっていたのでは?』


 本棚には開かない様に鍵が掛けられた。



 「どうせ悪女のやる事だから。」



 そんな悪意が、この青薔薇宮にも満ち溢れていた。



 何をやっても空回りで、ユースティティアは虚しい日々を過ごした。

 次第にユースティティアは部屋に閉じ籠るようになった。

 何をしていたかというと、キリクス宛に他愛のないラブレターを書いたり、エリスの呪いを解く方法を探したりしながら過ごした。



 魔法書を読み漁っていると『光属性の魔法』でしか出来ない魔法がある事を知った。

 エリスに脅されて以来、魔力のことは誰にも秘密にしてきた。



 自分の心に引っ掛かる魔法を独学で習得した。

 だがその魔法を使える事によって、ユースティティアは一つの大きな間違いを犯す事になる。

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