驚きの真実

 最後まで悲劇の主役を演じ続けるエリスを廊下で見送ったキリクスは、ザイン帝国の忠臣であり、専属護衛であるクラスィーヴイーを呼んだ。



 「クラスィーヴイー」はこの先の未来にユースティティアに処刑されてしまう。

 処刑をしたのが本当はどちらだったのか、今ではもう分からない。

 だが、今ではエリスである可能性が高い。




 「クラスィーヴイー。残りの滞在期間中、エリスを見張って欲しい。

 …どんな些細なことでも構わない。

 もし彼女に変わったことがあったらすぐに知らせてくれ。

 俺は暫く、お前の部下であるサボプに護衛についてもらうから。」



 「…御意に。それで殿下はどちらに?」



 紫色の護衛服に身を包んだクラスィーヴイーを立ち上がらせると、キリクスは静かに笑った。



 「心配ない。俺は自分の大切な人を探すだけだから。」





 クラスィーヴイーと別れたキリクスは、魔術を使い、皇城内を密かに歩き回っていた。

 本物のユースティティアを探すために。




 (それにしたって 何ということだろう———)



 キリクスがずっと恋焦がれていた人は、エリスでは無かった。

 エリスの姿をさせられたユースティティアだったのだ。



 エリスという名の、純粋で優しい姿はすべて偽りだった。

 ずっとキリクスは見抜けなかった。アドニスも。

 誰1人として。

 この先の未来では、キリクスもユースティティアを遠ざけてばかりいた。



 (果たして…未来で俺と結婚したのは本物のユースティティアだったんだろうか?)



 そう言えば、昼間の彼女と夜の彼女があまりに違いすぎると人格を疑ったこともある。

 つまり、未来でも度々2人は入れ替わっていた可能性があるということだ。



 思い返せばキリクスはユースティティアに対してずっと酷い扱いをしていた。

 幸せにするどころかずっと好きだったはずのユースティティアを悪女だと思い込み、冷たく突き放してしまっていた。

 その時の自身の行いを、キリクスは深く悔やんだ。





 *



 どれだけ探しても、皇城には彼女が見当たらない。

 本物のユースティティアの安否が気がかりだ。

 キリクスは焦りを覚える。



 前世ではあの夜を最後に、本物のユースティティアは二度と姿を現さなかった。

 確かにいたのは傲慢な態度をするユースティティアだったが、あれが入れ替わっていたエリスだったと今なら分かる。



 見送りの日に現れたユースティティアは、明らかに我儘で無遠慮。

 アドニスとキリクス、それにザインの臣下達を馬鹿にし、見下して笑っていたのだから。



 エリスに姿を変えさせられ、声を押し殺し、1人で泣いていたユースティティア。



 一体彼女がなぜエリスとして髪色や目の色を変えさせられているのか。

 あの様な粗末な格好をさせられているのか。



 頬を腫れさせ、痣をつくり、第1皇女であるにも関わらず、なぜエリスの言うなりになっているのか。



 (それを知ることが、この先に起きる兄の毒殺も止めるきっかけになる筈だ)



 キリクスは、ユースティティア側の事情を探ることにした。





        



      

       ◆登場人物◆


【クラスィーヴイー】…キリクスの専属護衛。

意味・美しい。(忠誠心が。)


【ボサプ】…クラスィーヴイーの後輩で皇族の護衛担当。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る