言ったら消えちゃった

天川裕司

言ったら消えちゃった

タイトル:言ったら消えちゃった


友達と満員電車に乗っていた。

終点まで行く予定。

いつも乗ってる電車ながら今日は特に人が多い。


優香「なんでこんな混んでんだろ?wいつももっと空いてるのにね」

「ほんとにwまぁこんな日もあるって」

と周りの乗客を見渡していた時、

1人、気になる女が向こうの方に居るのに気づいた。


まだ9月なのにコートを羽織ってるその女性。

「(なんであんなの着てんだろ。周りの人何も言わないのかな?」

なんて思いながらチラチラ見てると、

優香「あそうだ、あのさ、この路線で事故あったの知ってる?」

「事故?」

優香「そうそう人身事故。よくは知らないんだけどさ、なんか去年の暮れに女性が飛び込んだんだって」

「うそ??」

世間の事にはほとんど疎い私。


でもその時ふと、

さっきのあの女の人の事が気になった。

そしてまたあの人のほうを見ると、

「えっ…」

ちょっとギョッとした。

こっちを睨むようにして見ており、

全くの無表情で、微動だにしない。


「ねぇ…ちょっと、向こうのあの人……見ちゃダメよ!なんとなくで…。なんかさっきから変なのよ…」

優香「え?向こうの人?」

「ほら、あそこにコート着てる人いるでしょ…」

でも優香はキョロキョロするだけで、

その人の事がわからなかったみたい。


「どこ見てんのよ!あそこよあそこ!」

と言ってもやっぱり見えないみたい?

「え?ほんとに見えないの?」

優香「…コート着てる人なんて居ないじゃん」

そう言った瞬間、

あの人は人混みに紛れるようにして消えた…?


終点に着いて、乗ってる人はみんな降りた。

私はあえて優香をその場に留まらせ、

あの人が降りて来るのを待った。

でも最後の人が降りても、あの人は降りて来なかった。

1人だけコートを着てたから、

その姿のままで降りて来れば絶対わかるはず。

でもわからなかった。


優香「そんな事あるワケないじゃんwそれにいくらコート着てたからって、こんな人多いのに、紛れてわかるわけないってw」


「分かるわけない」…この言葉が少し残った。

あの人、もしかして…

優香がさっき教えてくれた事故の事を思い出しつつ、

それでも「そんな事あるワケない」の響きに自分を落ち着かせ、

私は日常へ戻ることにした。


結構こんな場面を、

誰でも日常で見てるのかもしれない。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=ewHKbsR3alM

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

言ったら消えちゃった 天川裕司 @tenkawayuji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ