第3話

パパは、親バカを通り越して感動した。


何故なら、数ページに渡って描かれた絵と物語は、まだ完結していないものの、しかっり絵本として成立していたからであった。


タイトルも『みかんちゃんといちごくん』と可愛らしく、絵は上手くないが味があり、物語も五歳の子供が考えた割には、支離滅裂にならず意外とまともな方向に進んでいた。


そして、パパは勝手に悟った。


ななは、物語を考えながら頭をフル回転させて絵本を描いていた結果、疲れ果ててしまい寝落ちしてしまったんだと。


パパは、ななの事がとても愛らしく思え添い寝をする事にした。


すると、ななが何やら大きな寝言を叫びながら、突然寝返りを打った。


その時、左手がパパの鼻に当たった。


しかも、あろう事か持っていたクレヨンが鼻の穴にぶっ刺さった。


「いでぇぇぇ!」


次の瞬間ーーーー


「ハッハァクショーーン!!!」


パパは、鼻がムズムズし、今までに体験をした事が無い位の大きなクシャミをした。


そして、その衝撃と痛みで一瞬意識が飛んだ。


ドーーーーン!!!


「イテテテッ!」


何か大きな弾力性のあるオレンジ色の物体と衝突した。


そして、辺り一面フルーティーな香りに包まれた。


(うん? ここは何処だ?)


「うぎゃあ!」


目の前には、パパと同じ位の大きさのみかんがーーーー


「あれ? いちごくんじゃないね」


しかも、言葉を喋った。


(嘘だろ!)


パパは目を疑った。


「ねぇねぇ、いちごくん見かけなかった?」


「いちごくんとは友達で、さっきまで一緒に遊んでいたのに」


「急に居なくなって……」


「ねぇ、いちごくん知らない?」


まだ、頭の中の整理が付かないと言うのに、みかんは畳みかけるように喋りかけてきた。

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