第11話

握っていた手を離し俺にスノーを抱かせようとした。



「いいの?」



「・・・ぅん」



俺はそっとスノーを両手で優しく包み込んだ。



「小さいね?温かいね?それに柔らかいね?」



スノーに顔を近づけると



「かわいい・・でしょ?」



微笑んだ彼女はさっきの表情が幻かと思うほどの優しさを含んでいた。



一体、あの時の彼女に何があったのか?隣に居たはずだが何も気付く事が出来なかった。



「・・・おふろ・・は?」



やべぇ・・・



「止めて来るね?・・・一緒に行く?」



もしかして?と思い聞いてみると・・・



「・・・行く」



俺からスノーを自分の胸元に引き寄せ手を繋いできた。



さっきと同じ様に風呂場に向かい、お湯を止めた。



脱衣場でタオルや新しい歯ブラシなどを用意して使い方を説明した。



リビングに戻り先に入る様に促すと



「・・・どこにも・いかない?」



揺れた瞳で問いかけてくる。



「ここで、スノーと待ってる。何処にも行かないから、ゆっくり温まるんだよ」



俺はスノーを受け取り「着替えはあるのか?」聞くと「持ってる」と言いバックからゴソゴソと取りだした。



見た感じ最低限の物しか入ってない様な気がした。



「おふろ・まで・・・いっしょ?」



言いながら手を握るから



「そうだね。一緒がイイね?」



彼女の手を引き連れて行って



「上がったらドアをトントンってして?お迎えに来るから。スノーと一緒に」



彼女はにっこり笑い初めて・・・



「・・・渉・・ありがと」



俺の名前を呼んだ・・・

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