第10話

俺は何かを言いたかったが、それすら許されない気がした。



そのままマンションに着きエレベーターに乗ると、ホッとしたのか握った手を少しだけ緩めた。



「ここだよ。入って」



彼女は答える事無くゆっくり入ると辺りをキョロキョロし始めた。



「誰も居ないよ。・・・こっちにおいで」



そのまま手を引いてリビングに連れて行った。



「少しだけ、手・・・離してもいい?」



彼女はやっと俺の顔を見た。そして・・・顔を横に振る。



「・・・そっか。じゃあ・・・一緒においで」



俺は荷物を置き、手を繋いだまま、お風呂場に行く。



「寒かったから温まろうね。でも、お湯の音でスノー・・・吃驚しないかなぁ?」



彼女はスノーを優しく胸に抱き・・・



「・・・大丈夫・・・」



やっと話してくれた。ただ声を聞かせてくれただけで胸がドクンと音を立てた。



お湯を出すとスノーが少しピクッと耳を動かした。



お風呂から出てリビングに戻りヒーターのスイッチを入れ彼女をソファーに座らせた。



何から聞けば良いのか?何を言えば良いのか?そんな事を悩んでいると彼女が・・・

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