第14話 自暴自棄
凛子の中では
誰にもここまでの深い話を
した事がなかったので
素直に心をさらけ出すことが
出来た自分に満足をしていた
しかし
宇宙の気持ちを考えると
楽しい時間を過ごせると思って
来てくれたのに
あんなに重苦しい話を
聞かせることになり
ごめんなさいね…って
思いではあった
―宇宙はどうしてるんだろう?―
と気になったりはしたのだが
宇宙からもあの日以来
lineも来なくなったので
なんてメッセージを送ったらいいのか
分からずに月日が経っていた
最近、夫との関係について
かなり真剣に考え始めるような
出来事が数々起こり始めて来た
夫が毎週のように
土日はネットの友人の所に
遊びに行ってて
家の事を全くしない事には
多少の不満はあったが
楽しかったと笑顔で
嬉しそうなのなら
まだ許せる気がした
だがしかし…
出掛けた後、必ず凛子に
『遊びほうけている自分に罪悪感を
感じてしまうんだ…』と
何回も言われることが
物凄く苦痛でたまらなかった
凛子は何度も言われるので
『だったら、
やるべき事をやってから
出掛けたらいいんじゃあないの?』
って言っても…
夫は…
『でも…やるべき事はしたくない…』
とまるで駄々っ子のように言うので
凛子の中でそういう無駄なやり取りに
うんざりしていたのだ
夫は自分の両親の事も私一人に
押し付けて
自分は遠方のネットの友人と
毎週あそび三昧…
そんな日々にどんどん凛子は
嫌気どころか…
あほらしくなって来ていた
そんな夫にイライラする自分で
居続けることにも
正直、嫌気がさして来ていた
ふと入院中の自分を思い出してみた
そう言えばこれからの9年の生き方を
考えて居たんだった…
それで先日、宇宙にも自分の真意を
勇気だして伝えたんだった
自分自身の人生をもっと真剣に
しっかり考えなきゃと思った
今の私は何からどう始めないと
行けないのか…
凛子は結婚してからも
ずっとこうやって
前向きにこの結婚生活を
いかにどうして行ったら
円滑に行くのかとか
義理両親の事にしても
ひとりで一生懸命に考えたり
尽くしたりして来ていた
夫にはそれが
当たり前になっていて
義理両親の面倒も
看てくれる
会社での行事も積極的に
動いてくれる
かなり都合のいいだけの
存在と成り下がっているのを
凛子は改めて感じたのだった
―今のままの自分で
いいんだろうか?―
なんだか…
どっと疲れが出て来て…
真面目にやっている自分に
飽き飽きし始めて来た
―わたしだって
遊びたい―
そう思い始めていた
かといって
今まで遊んで来ていない凛子には
どう遊んだらいいのか
分からなかった…
知らない間に
『宇宙~た・す・け・て』と
lineをしていた
宇宙は凛子からこのようなlineが来て
内心正直…
重たい…めんどくさい…って
思っていた
数週間前に会った時も
もっと楽しい笑える時間が過ごせると
思ったのに…
あんなに凛子の内情を深く聞かされて
宇宙は凛子と関わるのがしんどいと
思い始めていた
もっと気楽な関係で
楽しめる人だと思っていたのに…
僕に色々求められても無理…って
宇宙は思っていた
なかなか凛子に返事が返せないでいた
凛子も宇宙にSOSを求めたが…
やはり…正直に話しすぎたな…と
反省した
今は宇宙にはもう頼れない…
自分で何とかするしかないと思った
半ば自暴自棄になりながら、
ネットに書き込みをしてみた
すると一人の男性から返事が来て
やり取りをするように
なったのだった
どこの誰だかわからない事が
とても凛子には楽で
色んな話をしたのだった
その男性は仕事中に
怪我をして手の指を切断
していまったようで
今は休職中の身のようだ
かなり精神的に心の傷を
負っている感じだった
段々、会話をする日数が
増えてくると
『自分なんかもうどうにでも
なってしまえばいいんだ』
とメッセージに負の感情を
多く表すようになってきた
ふと、宇宙と最初の頃を
思い出した…
宇宙も最初の頃は似たような
負の感情をよく凛子に
ぶつけてきたものだった
凛子はそのネットの男性の事が
心配になって来てしまった
―元気づけてあげたい―
それでその男性に
『一度、会いませんか?』と
メッセージを送ってみた
するとその男性から
「会う勇気がありません…。』と
返答が返って来たのだった
凛子はどうして?と
優しく問いかけてみた
男性は…
『指を切断して障害者だからです。』と
答えた…。
凛子は
『障害者も健常者も関係ないです。
同じ一人の人間じゃあないですか…』と
凛子らしい真っすぐなメッセージを
送った
そんなやり取りをしてる中で
相手の男性の方が
凛子の情熱さに負けたようで
2人は会う事になった
凛子はよくよく冷静になって
考えてみたら
異性と二人っきりで
それもどこの人とも知らない人と
会う約束をしてしまったと
少し不安になって来ていた
でも、約束をした以上
守らないといけないわと
いつもの正義感の強い凛子に
なることで気持ちを
落ち着かせたのだ
待ち合わせ場所に着いて
待っていると
その男性がやって来た
『初めまして、花本です。』
凛子も緊張しながら…
『初めまして、山川です。』と
答えた
とっても優しそうで
話しやすそうな
人だったので
凛子はちょっと
安心したのだった
雨が降り始めたので
花本さんが車に乗って
話しましょうって言ってきた
車の中で…
ふたりっきりって…
大丈夫かな…。と
一瞬、警戒もした凛子だったが…
良い人そうに感じてたので
まぁいいかぁ~って思っていると
いきなり花本さんが
凛子にやさしくゆっくり
手を握りしめて来たのだった
凛子はびっくりしたが
そこまで嫌だという
気持ちでない自分に驚いた
心のどこかで
男性にこうされたい気持ちが
あったんだろうか…
今まで感じたことのない
自分を感じて凛子は
戸惑ってしまったのだ
凛子の心の奥深く中で
何かが起きているのだ…
それが何なのか…
まだ凛子には
わかっていなかった
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