第13話 告白と激白
『僕は凛ちゃんの事が好きです。凛ちゃんは僕の事をどう思っていますか?』
凛子は文面とはいえ、宇宙からの真っすぐな気持ちに、戸惑っていた。
凛子も宇宙の事は好きは好き。だけど…宇宙が凛子を想ってくれている好きとは好きの種類が違った。
凛子はこの人間って生き物の中でダントツ、宇宙の事は好き。宇宙って人間性そのものは好き。だけど恋愛の異性限定としてのラブの好きではなかった。
今までこれほどまでに男性女性としての関係性の事を、葛藤したことはなかった。
確かに夫と付き合った時も元々、親友からだったので恋愛に発展していくまでも時間がかなりかかった経験はある。
でも宇宙とはなんだろう…その一般的な男女のゴールみたいなそういう所に向かいたいのとは違う何か…なんだよなぁ…。
でも今の凛子にはそれを的確な表現で宇宙に伝えられるほど具体的なイメージすら湧いていなかった。
凛子に出来ることは今の素直な気持ちを凛子なりに宇宙に伝えるししかないと思った。
でもそれを伝えたらまた宇宙は激怒して去っていくだろうなぁ…。
そんなことを色々考えながら宇宙に今の自分の気持ちを真っすぐ書く事にした。
『宇宙…とても真っすぐな気持ちをありがとうね。だけどその気持ちには答えることは出来ません。ごめんなさい…。
私は宇宙の事を人間的に好きです。
宇宙の人間性そのものが好きです。なので宇宙が私を想ってくれる
好きとは違います。』
何十回も打っては消し…を繰り返してみたが、やはりこの文面しかないと凛子は思った。
その後、宇宙からメッセージが来た。かなり激怒していた。
『わかったよ。もうね、二度と僕も凛ちゃんにlineしないけど、
凛ちゃんも二度と僕にlineして来ないでね。』
凛子は即返答で…
『わかりました。二度と宇宙に、lineをしないので安心してください。』と送った。
それから3日経ったある日宇宙からlineが来た。
『凛ちゃんごめんなさい…。これからも僕とlineしてほしいです。』
凛子はびっくりした。今まで過去に宇宙が激怒して去って、こんなに早くに宇宙から、寄り添ってくれたことがなかったからだ。
凛子は宇宙に即返信を送った。
『うん!これからも仲良くしてね。』
凛子は今の宇宙になら、この今の凛子の心の中で、抱えてきている事を、素直に話して、受け入れてもらえそうな気がした。
凛子は宇宙とゆっくり話がしたいと思ったので、宇宙に日曜日の昼間に、時間を作ってもらえないか?lineを打って見た。
宇宙はOK~って返事をすぐくれたので、日曜日に会う事になった。
凛子は宇宙に何から話そうか。この日までいろいろ考えて来ていた。
宇宙には私と毒母との関係から、知ってもらいながら、今のかなり深刻なこの抱えている事を、理解して力を貸して欲しいと、思っていた。
今日は宇宙と会う日の日曜日。夫もネットの友達の所に、早朝から出かけている。なのでゆっくり時間はある。
不思議となぜか私も宇宙も、雨女と雨男なのに2人が会う日は、
清み切った青空で快晴であった。
待ち合わせの場所に行くと、宇宙はもう来ていた。宇宙は約束の時間よりも、30分以上前に着いていたい人なのだ。
ふたりで外で直接会うのは、かなり前に海に一緒に、出掛けた以来なので、凛子はちょっと緊張していた。
でもそんな気持ちも宇宙の屈託のない笑顔で、すぐ打ち消された。
『凛ちゃん、おはよう~見て見て~目の前にね、あれ、夫婦かなぁ?仲良しの白い鳥が2羽いるの。凛ちゃんと僕みたいだと思ったんだ…。』
いやぁ~この宇宙の子供の様な笑顔と、はしゃぎっぷりが、癒されるんだよなぁ~って凛子のテンションも上がってきた。
『どこどこ~わぁ~かわいい。ほんとだね。まるでふたごちゃんみたいだね。』
あちゃー
また地雷を踏んでしまったかな?
以前…
ふたごちゃんはNGワードだった事を、言ってから思い出したのだった。
でも、宇宙は激怒はしなかった。
凛子はほっとした。危ない危ない…気をつけないとね…。
ふたりが和んだところで、いよいよ本題に入ろうと、凛子がゆっくり毒母の事を話し始めた。
宇宙はいつもと違った感じで、真剣に凛子の話を、聞いてくれている。
でも宇宙には半分も、理解はできない感じではあった。それでも凛子は宇宙に聞いて欲しかったのだ。
凛子のルーツを宇宙には、知ってもらいたかった。
凛子は以前、宇宙と同じ職場だった頃にあったお花見の話もした。
あの時、宇宙は一人息子を、連れて来ていた。とっても子供をかわいがっている宇宙を見ていて、凛子は宇宙みたいな肉親が、居たらなぁ~って思ったのだった。
そして息子さんが、宇宙に甘えているのを見て、よーし!私も便乗させてもらおうって思って、宇宙に息子さんと一緒に、抱きついた事があったのだ。男女の抱きしめとは、全く違ったもので、愛情をもらいたいみたいな甘えというかぁ。
凛子の中で、自分がいかに肉親の愛情を、欲しているのかに気付かされた瞬間だった。
―子どもになりたい―
そう思ったのだった。凛子はデコボコの母娘の組み合わせなので、
インナーチャイルドを癒していく必要があるのだと思った。
その為には、宇宙のような深い愛情のある人から、もらっていく事も大事なんだと思った。
宇宙は不思議な男性で、男性なんだけど、母性愛情も持ち合わせているような、そんな特性を兼ね備えていた。
だから物凄く息子さんの事も、愛情いっぱいに育てて来ている感じだった。
だからこそ宇宙にこの気持ちを、話してみたいと思ったのだ。
宇宙の本当の素晴らしさを凛子は物凄く伝えたかったのだ。
宇宙はかなり驚いていた。両親揃って、姉妹もいて、家もあって、話をしていても、とても明るくて、そんな深い闇を抱えている人には、
見えていなかったからだ。
それと今まで母親以外の女性には、恋愛対象なのか、そうでないのかの、両者しか想像したことが、なかったからだ。
凛ちゃんが自分の事を、年上だから慕ってくれているのとも違う。
僕が男性で異性だから、惹かれているのとも違う。
今までの女性と凛ちゃんは、あまりにも違い過ぎて宇宙はかなり
困惑していた。
凛子もまた
宇宙の顔色の雲行きが怪しいのを、感じて話してよかったんだろうか…と心の中で考えていた。
でもどこかで話したいと、思っていたので、話せたことで、少し楽になれたのはあった。
しかし今までこんな奥深くに、眠っている胸の内を、ここまで話したことは、なかったように思う。
宇宙にはかなり、心に負担をさせてしまった激白だった。とは思うが、こういう段階を踏ませてもらわないと、今の凛子は前に進めないと思ったのだ。
凛子は宇宙にこんな重苦しい話を長々、聞いてくれて、時間を作ってくれて、ありがとうね。と言ってふたりは帰ることにした。
宇宙は家に帰って、今日の凛ちゃんの話を思い出していた。
でもあまりの衝撃の激白に、今はちょっと考えたくないと
思ったのだった。
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