第31話

俺はそれから希望の家にいることにした。

希望の家は明るい人ばかりだった。

八木が遊びに来ては俺をからかうと彩斗さんの顔を見て「俺が怖ーい」と震えてると、隼人さんや兄貴が「まあまあ」となだめるが、俺としては八木がからかうとひやひやする。早く八木に彩斗さんがどれぐらいやきもちを妬いてるのか自覚させないとなと思う。

そんなある日の事だった。俺はちょっと用があるといって門限までに帰るからといい、出かけた。居酒屋の前を通ったその時だった。見かけた顔を目にする。いたのはおれの兄ちゃんだった。スバル兄ちゃんまた呑んでるんだ。と思ったが、俺に気が付いてこっちに寄ってきた。「おい茂樹。どこにいってたんだ。おい逃げるのか」といい捕まえる。すると俺を引っ張り家に連れて帰られた。「まずい、門限あるんだ」というと、兄貴は「門限だ。お前、どこにいる」というと、このまま希望の家に迷惑をかけたらやばいと思い、言わなかった。そして、暴力を振るおうとしてた。その時だった。玄関を破って入ってきたのは、彩斗さんと隼人さんだった。俺の代わりに彩斗さんが殴られていた。そして、危ないと思った隼人さんが倒して止めた。そして彩斗さんは俺にこう言った。「怖かったな。大丈夫。俺の父もアルコール依存症だった。俺は親父を殺そうとした。大事な茂樹の兄ちゃんを殺そうとは思わない。だから茂樹、安心して」というと、「松井昴さんだね。まずはアルコール依存症の治療を受けてから、警察に自首しよう」というと、スバル兄ちゃんは暴れなくなった。それどころか彩斗さんに「俺は」というと、「何も言わなくてもいいよ。君も怖かったね」といい落ち着いてきた。彩斗さんは救急車を呼び、隊員に血圧や脈拍と病院名を伝えると一緒に同情してそのまま病院にいった。さすが彩斗さんはやっぱり医者だなと思う俺だったが。「隼人さんにごめん、心配かけて。門限まで破ってしまって」というと、「茂樹、俺、彩斗兄ちゃんと一緒に跡つけてたんだよ。俺がSPだから気がつかなかったみたいだね」というと、「送るよ。兄貴に事情説明して待ってもらってるからな」という。

希望の家に帰ってきた俺を抱きしめて兄貴がこういった。「お帰り茂樹、怖かったな」というと、俺は子供みたいにわんわん泣いた。

それを見てた栞さんは、「泣いたっていいの。男だからって我慢しなくていいの。あなたはまだまだ子供なのよ」といい兄貴と抱きしめてくれた。

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