第七章

第82話

あれから十年後ーーーー。


私は、小説家を目指しながら輸入雑貨を扱う会社で働いていた。


何故、小説家を目指しているのかと言うとーーーー。


アクション俳優をしていた頃、原始時代村でキャンペーン部隊に抜擢され、地方で宣伝活動をしていた時に、中年夫婦に本を渡されて、しれっと勧誘されたので忍法“本返し”を使おうとしたのだが、使えなかった悔しさから将来作家になって本を出版して、忍法“本返し”を使えるようになろうと決めたからなのでした。


しかし、小説家の道は思ったよりも険しい…………。


まず、文字を書く事に慣れていないので、すぐに疲れる。


書き方も良く分からない。


ありきたりの小説を書いても面白くないので、私にしか書けないものにしたいし。


下手でも、これだけは譲れない。


そして、見様見真似で短編を書いてみた。


タイトルは『あかんたれ』で内容はーーーー。


アクション俳優を引退した後に、初めて自主制作映画を監督した時の軌跡の物語です。


そして、次に書いた短編のタイトルは『幸せ者』です。


幾つになっても夢を諦めずに、頑張っているミュージシャンの物語です。


それから、行き詰まって何年も書いていない。


毎日残業続きの仕事に追われ、会社から家に帰ると疲れて頭も回らず、思考回路も停止状態に陥り悪循環…………。


何をしているのだろう。


何がしたいのだろう。


自問自答が続く。


もう少し、プライベートの時間と小説を書く時間を確保出来る融通の利く仕事に転職しよう。


今のままでは、本末転倒もいいところだから。


何を一番の優先順位に持って来るかが大事!


やりたい事や目指している夢がある以上、肉体的にも精神的にも楽な仕事に就けない限り、疲れきってしまう程の仕事を一番にしてはいけない。


仕事は、あくまでも食べていく為と、夢を叶える為の手段に過ぎないのだから。


そして、何回か転職を繰り返し、やっと自分の時間を確保出来る仕事に巡り会えた。


ある年の暮れ、グループ会社の忘年会があると言うので上司に誘われた。


本来私は、参加者リストに載っていなかったのだが、うちの会社から上司と参加予定だった先輩が、体調不良で参加出来なくなったので、一人分の枠が空いた穴埋めの為、急遽私が同行する事になったのです。


場所は、高級ホテルのパーティー会場を貸し切って行われた。


流石に大手のグループ会社主宰の忘年会とあって、高いお酒や豪華な料理が並んでいる。


参加人数も多く、ドレスコードの立食スタイル。


グループ会社の会長さんが乾杯の音頭を取る。


その前に社訓を全員で唱和する。


“夢なき者に目標なし”


“目標なき者に計画なし”


“計画なき者に行動なし”


“行動なき者に成果なし”


“成果なき者に幸福なし”


乾杯っ!!!!!

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