第75話
毎日が楽しいので、また家宝探しを忘れていた…………。
今日は、弟子に大事な用事があると言って練習を早く切り上げて神社探しから始めた。
この辺りは、何故か神社の数が多い。
大きい神社から小さい神社まで、大小様々だが合わせると二十箇所以上もある。
とりあえず、虱潰しに探すしかなさそうだ。
「すいません、これってありますか?」
一つ目の神社で家宝の和紙を広げて神主に尋ねた。
「ありますが、それがどうかしましたか?」
(凄いラッキーな事に一発目で引き当てた!!!)
「売って頂きたいのですが」
「値は張りますが、宜しいですか?」
「勿論です!」
「では、どうぞ」
「ありがとうございます!」
お金を払って“アレを”受け取った。
こんなに早くスムーズにゲット出来るなんて信じられない!
私は、なんて運がいいんだ!
五つ目コンプリート!!!!!
神社から戻って弟子に全ての事情を打ち明けた。
やっぱり弟子の鏡!
快く理解を示し応援までしてくれると言う。
しかし、五つ目の家宝が思ったよりも高くついたので、もう暫くお金を貯める為にお祭りワンダーランドにお世話になる事にした。
弟子も私が旅立つまで付き合ってくれると言う。
本当にありがとう!
とそこへ一本の電話がかかってきた。
商業舞台で知り合った俳優さんからだった。
用件を尋ねるとーーーー。
その俳優さんが、脚本と演出をする舞台の殺陣をつけて欲しいと言うオファーでした。
私は、特に断る理由もないので引き受ける事にした。
そして、その舞台の稽古場を訪れた。
びっくりしたのが、テレビアニメや映画で聞いた事のある声優さん達がいた事だった。
子供の頃に観ていたアニメの声優さんの声を目の前で聞いた時には凄く感動した。
私なんかが、この舞台の殺陣をつけても良いものかと戸惑いを隠せなかった。
案の定、私がつけた殺陣は手直しをされた。
手直しをした声優の方は、昔にスタントマンの経験があり(私よりも遥かにキャリアのある方)、何処の馬の骨かも分からない若僧の取って付けたような殺陣が気に入らなかったのでしょう。
知り合いの俳優さんのコネだけで仕事を引き受けたが、実力が伴っていなかったのです。
私も台本を深読みせず、閃きだけでつけたので薄っぺらい仕上がりになっていたのでしょう。
しかも、運動神経のレベルが人によって様々なので、思い通りに動いて貰う難しさも痛感しましたし。
やっぱり自分で動いて歓声や拍手を貰う方が、私の性に合っている。
これを最初で最後の殺陣師としての仕事にしようと決めた!
後に深夜番組のミニドラマで、アクションコーディネーターとして名前が掲載された事がありますが、メインでつけている方の隣で無駄話しばかりしているだけで、実際は何もしていませんので…………。
何はともあれ、殺陣師としては不甲斐なかったが、怪我人を出す事もなく無事に終わったので良しとしようではないか。
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