第73話

毎日が楽しく、夢のような時間を過ごさせてくれた商業舞台も無事に千秋楽を迎えた。


私は、明日から現実のお祭りワンダーランドでのお祭りマンに戻るのだ。


あぁぁ、名残惜しい…………。


次の日、いつも通りお祭りマンに扮して大道芸をしていると、一回目から五回目までずっとついて来て、何故か片隅で見学している女の子の姿が目についた。


何故、目についたかと言うと可愛い女の子だったからに決まっていると言えば語弊があるので、ずっとついて来るから気になった事にしておきます。


多分、お祭りマンの追っかけかファンなのでしょう。


しかし次の日も、また次の日も一回目から五回目まで見学している。


そして、遂にその時が来た!


可愛い女の子は、いきなり近づいて来てーーーー!


「弟子にして下さい!」


と言って私に土下座をして来た。


新手の嫌がらせなのか? 若しくは新手の逆ナンか?


私は、逆ナン恐怖症に陥っていたのでーーーー。


丁重に断った!


しかし、しつこく土下座をしながら、熱心に弟子志願をしてくるものだから、話しだけでも聞いてあげようと思った。


すると、弟子志願者は海外でイリュージョンのショーに携わっていて、アシスタントをしていたと言うのだ。


そんな人が、どうして私なんかの弟子になりたいのかと尋ねるとーーーー。


探し求めていたエンターテイメントの集大成が、私のお祭りマンだと言うのです。


まぁ、普段はあまり誉められないので擽ったいけど、それ以上に嬉しかった。


兎に角、弟子志願者の直向きな熱意とエンターテイメントに懸ける情熱に、根負けして受け入れる事にした。


あと、屈託のない可愛い笑顔にもヤラレた…………。


そして、正式に弟子にしてイリュージョンの知識を借りて大道芸に織り混ぜたものを考案した。


それを早速、お祭りワンダーランドのお偉いさんに駆け寄り、ネタ見せをしたら一発で合格をした!


そして、弟子をアシスタントとしての契約に、こぎ着ける事に成功した。


あくまでもアシスタントなので、日給は五千円保証に留まったが、それでも弟子は喜んでいた。


しかし、これが老若男女問わず大好評で評判も良く、お客様の集まりも増え投げ銭も増えたので、ギャラとして私から日給一万円を保証する事にした。


弟子も色々生活があるだろうから、五千円ではキツイと思うので、私の支払うギャラと合わせれば日給一万五千円になるので、普通に生活が出来るだろう。


しかも、弟子のお陰で投げ銭も増えたので、結果的に私の日給も少し上がった。


更に、準備や後片付けなど細かい事は、全て弟子がこなしてくれるので、その分私の負担も減り楽になった。


やったぜ! Win-Win!!!


しかし、これに甘んじる訳ではなく、常に新しいネタを模索して考案する作業は怠らない事にしている。


リピーターのお客様は、飽きるのが早いから…………。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る