第70話
私は、心の中でーーーー。
(違ってくれ! いや、違って欲しいと願った!)
そして、犯人と思わしき人物の部屋を訪ねた。
「こんな時間に、どうしたんですか?」
「いや、ちょっと気になった事があって…………」
「何ですか? いつになく神妙な顔をして」
「単刀直入に聞く!」
「ちょっと怖いんですけど…………」
「連続窃盗犯はお前か!?」
「…………」
「何故、黙ってるのだ?」
「やっぱり先輩の目は、誤魔化せませんね…………」
「どうして、こんなバカな事をしたのだ!?」
「…………」
暫く沈黙が続いた後、後輩は重い口を開いた。
「僕が、アクション俳優を目指すキッカケになった海外のアクションスターの噂を知っていますか?」
「どんな噂?」
「彼を起用してCMに出演して貰った企業が次々と潰れていくと言う噂です」
「聞いた事あるかも」
「実はそれには裏があって、逆に言えば彼はCMに出演する企業を選んでいたのです」
「どう言う事?」
「つまり、有名な彼がCM出演する事によって、その企業は世間から注目される事になる訳なのです」
「良い事じゃないの?」
「企業の知名度を上げるのには良いのですが、その分根掘り葉掘り調べ尽くされるのです。」
「何か都合悪いの?」
「はい、その企業が脱税やインサイダー取り引きなどの汚職や、悪事を働いて業績を伸ばしてきた事まで暴かれてしまうからです」
「そうか…………」
「だから彼は、わざとそう言う悪い噂のある企業だけのCMに出演して世直しをしていたのです」
「凄いなぁ、あのアクションスター!」
「だから、僕も尊敬する彼に少しでも近づこうとして、今の僕に出来そうな世直しを考えた結果、悪い噂のあるお金持ちの家から盗んだものを恵まれない子供達に寄付しようと思ったのです…………」
「ただ、アクションスターは正当なやり方だけど、お前の場合は犯罪だからな!」
「…………」
「ちなみに、何故神社にも盗みに入ったのだ?」
「それは、あの神社の神主が悪徳霊感商法の詐欺に加担していると言う噂を耳にしたからです」
「そうだったのか!」
「あっ! これ先輩が探しているものじゃないですか?」
そう言って後輩は、おもむろに“アレ”を箪笥の中から出してきて私に見せた!
「あっ! 正しくこれだよ!」
「どうぞ」
「どうぞじゃないだろ! 盗んだものだろ!」
「…………」
「兎に角、まずは神社に行って神主に、お賽銭箱の中身と盗んだものを全部持って謝りに向かうぞ!」
「はい…………」
「それから、自首するのだぞ!!!」
「…………はい」
神社に着いて、神主に事の経緯を全て話し、とりあえず謝罪した。
すると、神主は噂になっていた悪徳霊感商法の詐欺疑惑をあっさり認めた。
私は、空気が読めない奴と思われるのを承知で神主に聞いた。
「こんな状況で凄く言いにくいのですが、“アレ”を売って欲しいのですが」
「君が取り戻したのだから、君のものだよ」
「えっ! と言われましても…………」
「どうせ暫くの間、ここを留守にする事になるだろうから…………」
意味深な事を言う神主であった。
「では、気は引けますが、お言葉に甘えて頂きます!」
こくりと頷く神主。
「本来神に仕える立場の者が、ほんの出来心とは言え詐欺の片棒を担いでしまうとは………… 本当に情けない…………」
「一から出直すつもりで、彼と一緒に自首するよ」
そう言って神主は静かに目を閉じ瞑想に入った。
どれ位の時間が流れたのか、凄く凄く長く感じた。
暫くして、私は二人を警察署まで見送った。
四つ目、コンプリート……………………。
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