第68話

さぁ、待ちに待った番組の公開収録の日を迎えた!


スタジオ近くの野外に特設ステージが組まれ、日が落ちるを待ち、テレビディレクターの合図をキッカケに、大音量の番組ソングが流れ、きらびやかな照明が焚かれ、有名アナウンサーの実況が始まり、出場権を勝ち取り決勝の舞台に駒を進めた精鋭達が、客席からの大歓声を受けて、次々に紹介されていく!


そして、精鋭二十五人が出揃ったところでーーーー。


番組のタイトルコール!!!


格好良すぎる演出にシビレました!


アスリートをはじめ、格闘家、五輪メダリスト、スポーツインストラクターなど、選ばれし体力自慢の精鋭がここに集った!


自分の定位置に着くと、まず腕立て伏せをする姿勢をとらされ、手の幅と足の幅が設定される。


それから、肘を曲げて上体を下げた時の顎の位置にパットが置かれる。


今回から、正しい腕立て伏せの姿勢をさせる為に考案されたものらしい。


今までのような自己流の姿勢は、許されないと言う事になる。


ペースも今までは、自分のタイミングだったのがーーーー。


今回から、一定のリズムで刻まれる太鼓の音に合わせて行う事になった。


要は、従来のようなズルやインチキが出来なくなったと言う訳なのです。


当然、そこまでしてもズルやインチキをする者も現れるので、精鋭一人一人に合計二十五人の監視係が付けられていた。


手や足の幅、肘をしっかり曲げてパットに顎がついているか、太鼓の音に合わせて行っているかや細かい所までチェックされる。


ちなみに、太鼓の音に合わせる事が出来ずに、遅れたりして失格になるケースが多い。


ドン! 一回、ドン! 二回、ドン! 三回。


このように、一定のリズムの太鼓の音に合わせて腕立て伏せを行うのだが、予選では自分のペースで千回出来た者が、このやり方では百回も出来ない者が続出したのであった。


私も予選では軽く五百回は出来たのだが、百回の壁をクリアした辺りから凄くキツくなってきた。


しかし、客席からの後輩と彼女からの応援が、私の力となり持ちこたえる事が出来た。


周りを見渡すと百五十回を越えた辺りからは、半数以上がリタイアしたり失格になっていた。


結局、上位には食い込めたが悔しい結果に終わった…………。


まぁ、テレビで見た事のある五輪メダリストには勝ったので良しとしよう!


しかも、インタビューを求められ悔しい気持ちをコメント出来たので。


後輩も彼女もアクション俳優として充分な結果を出しくれたと、健闘を称えてくれたので安心した。


後日、番組のオンエアを観て我ながら感動した。


終始格好良い演出で、私が腕立て伏せをしている場面も名前と年齢とアクション俳優としてのテロップが入り紹介されチラホラ写っていたし、極めつけはインタビューのコメントもバッチリ放送されので満足です。


更に、番組の最後に流れるエンディングテロップで発見してしまった!


なんと、番組の監修をお笑いセミナーの講師の方がやっていた!


この世界の狭さを痛感した瞬間だった!


どうりで、一度何か問題を起こしたり、やらかしたら這い上がるのが、大変極まりない訳だわ…………。

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