第67話
私と後輩が、お客様のウケを狙い合い切磋琢磨していた頃、あるニュースが飛び込んできた!
なんでも連続窃盗犯が現れたらしいのだ。
しかも、お金持ちの家ばかりが狙われているようなのだ。
「物騒な世の中になってきたな」
私は後輩に言った。
「でも、僕達には関係のない事ですね」
後輩はこう切り返してきた。
「どうして?」
「だって狙われているのは、お金持ちばかりですよ」
「そうか!」
「話しは変わりますが、昨日の深夜番組で腕立て伏せを競い合う番組観ました?」
「観てないけど、何それ?」
「体力自慢達が揃って、腕立て伏せを何回出来るのかを勝負しているのですよ」
「面白そうだね」
「是非、先輩に出て欲しいのですけど」
「何故?」
「先輩に、正しい腕立て伏せを体力自慢達に見せてやって欲しいのです」
「どう言う事?」
「奴らの腕立て伏せは、自己流で手や足の幅もメチャクチャで上体もろくに下げず、肘もしっかり曲げずにインチキばかりで、とても腕立て伏せと呼べるものじゃないからです」
「そう言う事か!」
「もう歯痒くて観てられなかったですから、先輩! お願いします!」
「分かった! ところでどうやって出るの?」
「自薦他薦問わず、体力自慢を募集しているようなので僕が、代わりに応募しておきます!」
「あぁ、宜しく!」
「ちなみに、次回から放送枠が変わって深夜帯からゴールデンタイムに昇格するらしいのですよ」
「本当に?」
「はい! アクション俳優の底力を見せてやりましょうよ!」
「よし! 分かった!!!」
そうして迎えた番組の予選大会。
予選会場を見渡すとーーーー。
全国から集まった体力自慢達が、所狭しと犇めき合っていた。
まず、一通りの体力測定から始まった。
久しぶりに行う体力測定で、学生時代とは比べものにならない位に、体力も筋力もレベルアップしていた事に気付かされた。
それもそのはず、アクション俳優になる為に命を張って地獄のトレーニングに耐えてきたのだから!
各々体力測定を終えた者から、本題の腕立て伏せの予選に突入した。
ルールは単純明快!
腕立て伏せを何回出来るのか測定するだけ。
そして、上位の二十五名が本選で競い合う事が出来るのです。
しかも、テレビ放送のゴールデンタイムの中で!
なので、余計に予選で負ける訳にはいかない!
プロのアクション俳優として!
意地とプライドを懸けて頑張り抜いた結果ーーーー。
見事、本選の出場権利を勝ち取る事に成功した!!!
とりあえず、プロのアクション俳優としてのメンツは守れたかな。
一安心。
これで後輩にも顔向けが出来る。
しかし、本当の勝負は当然これからである。
本心を言うと、あれだけ沢山の体力自慢達の中から、選ばれた精鋭二十五名の中に入れただけでも奇跡に近いのだけどね。
だって、テレビで見た事のある五輪のメダリストが数人いたんだもん…………。
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