第66話
長い期間、毎日同じ内容のショーをしていると、必ず陥るのがマンネリ化なのである。
そして、リピーターのお客様にも飽きられる為、定期的に演目を変えるのだが予定ではまだ先なので、そこを乗り越える為に、ちょっと面白い試みをする事にした。
それは、配役を変えるのだ!
普段の配役は、私が保安官の役で後輩が泥棒の役を演じている。
それを逆にするのだ!
私が泥棒役で後輩が保安官役。
理由を述べて演出側に許可を取りやってみた。
すると、私は新鮮味があって良かったのですがーーーー。
後輩が、どうも落ち込んでしまう事に。
落ち込んだ理由とはーーーー。
泥棒役の時は、保安官とのやり取りの中での動きやリアクションで笑いを誘うのですが。
保安官役の時は、台詞やアドリブでお客様をイジって笑いを誘うので。
身体を使って笑いを誘うのか、言葉で笑いを誘うのかの違いになるのです。
後輩は、動きやリアクションで笑いを誘う事は出来ていたのだが、台詞やアドリブの言葉で笑いを誘う事が出来なかったのです。
これに関しては、仕方がない事だと思った。
何故なら、私とは場数が違い過ぎるからなのです。
私は、原始時代村での前説から始まり、お見合いパーティーの司会などをやってきたので。
しかも、それに加えお笑いセミナーまで受講して少なくとも“笑い”と言うものを勉強したので。
それでも、後輩が頑張りたいと言うので私なりにアドバイスをしてあげた。
まず、台詞に関しては台本での決まった文言の為、勝手に変える訳にはいかないので、言い方や間の取り方を指導して、お客様イジりも、誰でも良い訳ではなくショーが始まる前に客席を覗いて、予め誰にしようか決めておいたりイジりやすそうな人をリサーチして、ノリの良さそうな人を選び、アドリブで面白い事が思いつけば良いが、念のため幾つか言葉を用意しておいてアドリブっぽく言うとか色々教えてあげた。
しかし、これはあくまでも私なりに工夫を重ね考えて試した結果、辿り着いた一つの答えだから、全てを鵜呑みにしないで欲しいとも伝えた。
そして、後輩は次のショーですぐに結果を出した!
って言うか、ちょっとアドバイスをしただけで、こんなにすぐ出来る後輩が凄い!
これをセンスと呼ぶのでしょうか?
私は、恥ずかしながら少し嫉妬を覚えてしまった…………。
しかも、回数を重ねる度に更にお客様のウケが良くなるのだから。
本当に悔しいですっ!!!
私のこれまでの経験と場数とお笑いセミナーは、いったい何だったのか………………。
後輩に軽く越えられてしまった!
ちっきしょーーおっ!
私も保安官役をやりたくなってきた。
このままだと、後輩に保安官役を取られそうなので、奪い返してやるぜっ!!!
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