第62話

私は、自分を責め立てた。


全ては、己の驕りから生じた自惚れと勘違い。


一体全体何をやっているのだろう…………。


こんなところで躓いて。


深々と反省した。


まだまだ目標の半ば、あと四つ“アレ”を集めなければならない!


私は、性根と気合いを入れ直した!


それから、数日経ったある日、セキュリティワールドのエンターテイメント部門から突然連絡が来た。


侵入したその後、セキュリティワールド内で私の事が話題になったらしく、オーディション主宰者が気にかけて下さったようで、オーディションを受ける事が出来なかったが、私の経歴と十メートルの鉄柵をいとも簡単にスルスルよじ登る身のこなしと、オーディションに賭けるバイタリティが評価されてーーーー。


合格です! と言われた。


こんな冗談みたいな事が、本当に起こるなんて。


何がキッカケになるのか分からない世界だ!


ちなみに、セキュリティワールドのメインで行われる野外ショーは、保安官が泥棒を追いかけるアクションコメディなので、その中に十メートルの鉄柵を登ったり降りたりの場面を追加で組み込みたいと言う事らしい。


そう言う事で、どうにか首の皮一枚で繋がった。


私は、目標が軌道修正出来た事に喜びを感じた。


その思いとオーディション主宰者に感謝の気持ちで、リハーサルに挑む事にした。


そして、迎えたリハーサルの顔合わせで驚いた事があった!


その顔ぶれの中に、若い警備員の姿があったからだ!


「合格したのですね!  おめでとうございます!」


私は、声を掛けた。


「ありがとうございます! その節はどうも失礼しました!」


「いえいえ、あの時は私が悪いので…………」


「敬語は止めて下さい! 先輩!」


「あっ………… あぁ…………」


「僕はアクション俳優一年生ですから、御指導御鞭撻の程宜しくお願い致します!」


「急にかしこまっちゃってどうしたの?」


「厳しい世界だと聞いていますので」


「確かに色んな意味でも厳しい世界だけど、楽しく行こうよ!」


「はい! 承知しました!」


「ん? 何か固いなあ」


こうして、私を慕ってくる後輩とも巡り会えた。


そして、ショーのアクション監督から配役が告げられた。


私は、保安官役で後輩が泥棒役。


皮肉な事に、不法侵入した私が保安官で、元警備員の後輩が泥棒って言う因果関係が笑える。


それから、本格的にリハーサルが始まった!


リハーサルを進めて行く段階で、アクションコメディなので観客に向けて笑いを誘う演出があるのですが、私的にどうもしっくりこないものばかりで。


演じている私が、つまらないと思うものを果たしてお客様が笑ってくれるのか?


そこに凄く疑問を感じたので、台本を練り直して貰えないか打診をしてみたのだが、即効で却下された。


演出側は、絶対ウケるからやってくれの一点張り。


演出側からすると、一アクション俳優が何を生意気な事を言っているのだ! と思われたのでしょう。


しかし、面白くないものは面白くない!


この時の私は、正直何が面白くて何が面白くないのか分からなくなっていたのかもしれないが…………。

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