第58話
私が、あまりにも喜ぶものだから、気を良くしたズッキーニ夫人は更にーーーー。
「もし、良かったらコレもあげようか?」
と言って、透明な液体の入ったプラスティックの容器を二つくれた。
「えっ! いいのですか?」
「いいよ、その代わり何処かで披露してね!」
「はい! 分かりました!」
「マジックは披露して、人に見て貰ってなんぼの世界だから」
「エンターテイメントの世界は、そう言うものですもんね!」
何度も小刻みに頷くズッキーニ夫人であった。
「ところで、コレの使い方を教えて頂けませんか?」
「あぁぁ、そうだったね!」
「まず、このAと言う液体をタバコの先に付けておく」
「次に、どこでも良いのだが、今回はシャツの襟にしておこうかな」
と言って、Bと言う液体を付けた。
「そして、タバコの先をシャツの襟と接触させると、火がつくと言うマジック」
「すなわち、Aの液体にBの液体が触れると発火すると言う仕掛け」
「確かに、コレもAとBの液体を持っていれば、誰にでも出来ますもんね」
「そうなんだよ! これがきゅうり男爵のマジック」
「でも、何のテクニックもない素人の私には、ピッタリのマジックです!」
「まぁ、コレに話術を混ぜてAとBをどのタイミングで何処と接触させたのか分からないようにしてやれば、よりマジックのレベルは上がるよ」
「ズッキーニ師匠! ありがとうございます!!!」
「師匠はヤメてよ、恥ずかしいから」
と言いながら満更でもない様子だった。
そうやって、あと幾つか簡単なマジックを教わってからバーを出た。
私は、部屋で話術を混ぜながら、お客様がいる体で何度もシュミレーションをして練習を重ねた。
そして、そのマジックを早速、お見合いパーティーの司会の仕事で披露した。
忍者衣装を着て連続バク転で登場した後ーーーー。
火のついたタバコをハンカチーフの中に入れて消す、と言うマジックから披露した。
しかし、ここで事件が起こった!
燃えやすい安いハンカチーフを使ったのが原因なのか、私のマジックの腕前が悪いのが原因なのかは定かではないが、ハンカチーフに引火してーーーー。
ハンカチーフは、炎で燃え上がった!!!
「おぉぉぉ!!!」
どよめきはあったが、それを見ていた参加者達は、何が起こったのか理解出来ず、成功したのか失敗したのか、一瞬判別がつかない状態に陥っていた。
その空気を読み取った私はーーーー、
もう一度、わざとハンカチーフに火をつけて燃やし、炎が上がったと同時に宙返りをして誤魔化した!
すると、こう言う芸だと思って貰えたのか、炎越しの忍者の宙返りが、カッコ良く見えたのかーーーー。
割れんばかりの拍手を送ってくれた。
私は、気を取り直し落ち着いて、今度は引火しないように慎重に、もう一度火のついたタバコをハンカチーフの中に入れて消し去るマジックを披露した。
二度目の挑戦で見事に成功した!!!
参加者達からも拍手が沸き起こった!
続け様に、参加者に混じった仕込みの者から、あらかじめAの液体を付けたタバコを借りて火をつけるマジックを披露した。
またもや拍手喝采!!!
そのあと、幾つかマジックを披露した後、大盛り上がりの中、いつも通りのお見合いパーティーの司会進行に移行した。
この件以来、常連の参加者達からはーーーー。
“炎の忍者”と呼ばれるようになった!
ちなみに、ハンカチーフを燃やして炎が上がった中での宙返りは、定番の芸として披露する事になったのは言うまでもない…………。
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