第57話

ミュージカル劇場のショーに、一緒に出演しているズッキーニ夫人の中に入っているダンサーと、きゅうり男爵の中に入っているダンサーが、いつもいがみ合っているのです。


ショーのストーリーの中でも、いがみ合っているのですが、プライベートでもいがみ合っているのです。


なんでも、二人共キャラクターダンサーになる前は、手品師だったとか。


しかも、同じマジック学校の出身だそうで、余計にライバル関係にあるのだとか。


二人揃えば、いつも口喧嘩をしているイメージがあるほど。


お互いにお互いの悪口を常に誰かに聞いて貰っている感じ。


そんなものだから、私もズッキーニ夫人に捕まり、きゅうり男爵の悪口を聞く羽目になってしまった…………。


適当に話しを合わせてあげて、やっと解放されたと思ったらーーーー。


今度は、きゅうり男爵に捕まった…………。


両方の悪口を聞いた結果ーーーー。


言い方は悪いけど“五十歩百歩”、“目糞鼻糞を笑う”だね!


まぁ、二人が中に入っているキャラクターの野菜も似ていると言う事が笑える。


ズッキーニときゅうりだもんね。


それで、ズッキーニ夫人の中に入っているダンサーと帰り道が、途中まで一緒なので少し興味があった手品の話しを持ち掛けてみた。


すると、スイッチの入ったズッキーニ夫人は、行きつけの手品バーに連れて行ってくれると言い出したので、連れて行って貰う事にした。


手品バーの店内には、様々な仕掛けが施されており、一見さんは必ず仕掛けでもてなされる。


中には困る仕掛けもあった…………。


あれだけは本当にやめて欲しい。


心臓に悪いから…………。


バーのマスターもテーブルマジックやカードマジックで、もてなしてくれた。


そして、やっぱりはじまったズッキーニ夫人によるきゅうり男爵の悪口。


ズッキーニ夫人曰く、きゅうり男爵の手品はお金にものを言わせて、外国の露天で売られているものを買ってきてるだけだから誰にでも出来ると。


例えばコレと渡されたのが、親指の指サックでした。


特殊な素材で親指そっくりに精巧に作られた指サック。


使い方はこうやるのだ。


はじめから親指の指サックをハメた状態でハンカチーフを広げ、種も仕掛けありませんと言って裏表を見せてから握った手の中にハンカチーフを丸め込む。


その時にハンカチーフの中に親指の指サックを外して入れておく。


そこに、火のついたタバコを手の中に丸め込んだハンカチーフの中に押し込んで、タバコごと消すと言うマジック。


仕掛けは、親指の指サックの中にタバコを押し付けて消しながら入れて、また親指にハメて隠しているだけなので、確かにこの親指の指サックさえあれば誰にでも出来るマジックである。


でも、初めて見ると当然仕掛けが分からないので凄いと思ってしまう。


まさか、精巧に作られた親指があるとは、想像もつかないですからね。


これなら出来ると思った私は、駄目もとでズッキーニ夫人に親指の指サックを譲って欲しいとお願いしたら、マジックに興味を持ってくれて嬉しいから、いいよと言って簡単に譲ってくれた。


ありがとうございます!!!

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