第55話
こうして、お見合いパーティーの司会と言う新ジャンルの仕事に味を占めた私は、ベジタブルランドでのショーに負担がかからない程度に、シフトを増やして貰った。
何回も言いますが言い方は悪いけど、こんなに身体が楽で楽しい仕事に巡り会うなんて。
本当に顔が怖い背の低い先輩には感謝しなければ。
強いては、そのキッカケになった都市伝説のダンサーにも感謝しなければならない。
しかも、嬉しい事に原始時代村での経験も役に立ったのでした。
お見合いパーティーの司会の仕事は、当然司会進行が主要な役割を占めるのだが、それ以上に求められるのが話術であった。
カップルを成立させる為には、参加者の緊張をほぐして場を盛り上げてあげなくてはならない。
それに一役買うのも司会者の大事な仕事なのです。
従って、アドリブで場を盛り上げて、なんぼの世界な訳なのです。
だから、カップルを成立させる確率を上げるには、司会者の腕前にかかっていると言っても過言ではないのです。
その貴重な技術を身に付けさせてくれたのが、原始時代村でやらされていた前説なのです。
新人の時は、次のショーの準備やら雑用などを色々やらされていたが、後輩がやってくれるようになってからは前説をする役に昇格したのだ。
昇格したと言っても私は、前説をするのが凄く嫌だった。
毎回、劇場のお客様の性別や年齢が違う為、同じ事を言ってもウケる時とウケない時があったりして、根本的に人を笑わせたり盛り上げたりするのは難しいからだった。
それでも、仕事だからと割り切って嫌々頑張っていたのだけど…………。
それから、試行錯誤してあらかじめ客層を確認してから、お客様に合うネタに変えるようにしていたのだ。
毎日、一日八回もやっていれば不思議とアドリブにも強くなり、老若男女に対応出来るようになってくるのです。
誰でも場数を踏めば、それなりに技術は身に付くと言う訳なのです。
しかし、その経験を生かす時がやって来るとは。
色々な経験はしておいた方が良いと言う事ですね!
昔の人は“若い時の苦労は買ってでもせよ”とは良く言ったものですが、本当にそうかも知れませんね!
正に“芸は身を助ける”。
そこで私は、せっかくなので私にしか出来ない事をやろうと決めてお見合いパーティーの司会の仕事に勤しんだ。
話術で笑わせる以外に受けが良かったのは、司会者が登場する場面でカッコいい音楽を流しながら、忍者に扮装して連続バク転をして現れた時は、拍手喝采でした。
あと、フリータイムの時にちょっとした大道芸やブレイクダンスを披露した時も盛り上がった。
私の芸を見て楽しんで貰って、参加者同士が話すキッカケになったりしてくれたのでやって良かった。
こっちを本業にしようかな。
ちなみに、口先だけで楽して稼ぐつもりが、結局は身体を使う羽目になっていた。
私は、そう言う運命なのかな…………。
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