第44話
絶世の美女ダンサーは、黒いマントを身に纏いドラキュラに扮装していた。
美人は何をしても美人である。
時折、片言の日本語でーーーー。
「血ぃ吸うたろかねぇ」
と言ってくる。
世の男性の皆さん、吸われたい! と思うのは私だけでしょうか?
しかしながら、どうやってお尻のタットゥを拝めば良いのやら…………。
あんなに大きなマントでガッツリ身を包んでいるではないか。
兎に角、観察して隙を伺うしかなさそうだ。
テーブル席に座って楽しそうに飲んでいる絶世の美女ダンサー。
おっ! 立ち上がった!
行き先を目で追ったが、飲み物をオーダーして戻ってきて座った。
おっ! また立ち上がった!
今度は、白々しく後をつけたがトイレに逃げ込まれた。
手強い…………。
しかし、トイレから出てきたら、なんとマントが少し捲れ上がっていた!
チャンス!!!
私は、近寄って躓いたふりをして覗き込もうとしたら、バランスを崩して本当に躓いて転んでしまった。
なかなか手強い…………。
優しい絶世の美女ダンサーは、そんな私に手を差しのべてくれた。
またもやチャンス!!!
その差しのべてくれた手を私の方に引き寄せた時、今度は絶世の美女ダンサーがバランスを崩して転んだ。
絶世のチャンス!!!
マントの中に頭を入れようとした瞬間ーーーー。
びっくりする位の尋常じゃない速さで立ち上がり、ついでに私を女性とは思えない程の物凄い怪力で、引っ張り上げて立たせた。
相当手強い…………。
更に、頭をナデナデされてーーーー。
「血ぃ吸うたろかねぇ」
と微笑みながら言われた。
スピードもパワーもユーモアも負けた…………。
完全に完敗だ…………。
しかし、ここで諦める訳にはいかない!
私は、意思とは関係なく止まらない瞬きをしながら何事もなかったかのように振る舞い、テーブル席までエスコートをした。
この時の瞬きの回数はギネス級だったと思う。
座った絶世の美女ダンサーは、お礼に大きく一回ウインクを飛ばしてきた。
「バビローーン!!!」
ビビッときた私は、反射的に意味不明の言葉が出た。
益々、お尻のタットゥを拝みたくなった。
一旦、落ち着きを取り戻す為、水を飲んでまたカウンターに座り様子を伺う事にした。
すると、絶世の美女ダンサーが足を組み替えた。
角度によっては少し中が見えるかもと思い、カウンターから見えそうな位置に移動した。
そして、じぃーーと気長にもう一度組み替えるのを待った。
よし! 組み替えた!
見えた?!
いや、ちらっと見えたのは太もも…………。
私は、冷静になりやっと大きな間違いに気づいた。
タットゥが入っているのはお尻。
すなわち、座っている状態では見える訳がない。
私は、SMの女王様の格好をして一体何をしているのだろう…………。
自己嫌悪に陥った瞬間ーーーー!
店内の大音量で流れていた音楽が変わったと同時に、絶世の美女ダンサーは、突然立ち上がり身に纏っていた黒いマントをカッコ良く豪快に脱ぎ捨てた!
そして、ニップレスにティーバッグ姿のスタイル抜群のダイナマイトナイスボディーの美しい身体が露になった。
「バビローーン!!!」
私は、また意味不明の言葉を放ち驚きのあまり目が飛び出そうになった。
いやらしい感じが一切せず、逆に神々しく見えて有難い気持ちになった。
だから、タットゥを“拝む”と言う表現になっていたのかと理解した。
爆音に合わせて情熱的に踊り狂う絶世の美女ダンサーの後ろに回り込み、お尻に標準を合わせた!
遂に見えた!!!
あんなに苦労しても見えなかったお尻のタットゥが、こんなに意図も簡単にお目見え出来るとは…………。
お尻の右側に真っ赤な薔薇のタットゥ!
これが本当の”情熱の薔薇“!!!!!
しっかり拝ませて頂きました!
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