第43話

パレードダンサーとして板についてきた頃。


情熱の国のダンサーからパーティーに誘われた。


場所は、ダンスをしながら呑めるバーのような所だった。


情熱の国のダンサー曰く、今夜は仮装パーティーだから何かに仮装してきて欲しいと。


私は考えた。


普通の仮装をしても面白くないのでーーーー。


百貨店の中にあるパラエティコーナーで、探してチョイスしたもので仮装する事にした。


ただ、仮装したまま向かったら確実に職務質問だけでは済まされないと思ったので、バーの中で着替えさせて貰う事にしようとしたが、案の定バーの入り口で止められた。


私は、過激な格好なので、仮装したまま訪れると警察に捕まる恐れがあるので、トイレで着替えさせて欲しいとお願いした。


それならオッケー! と店内に招いてくれた。


店内では、様々な仮装に扮した情熱の国のダンサー達で賑わっていた。


私は、早速トイレに向かい着替え始めた。


情熱の国のダンサー達は、私の仮装を見てどんなリアクションをするのだろうと考えるだけでーーーー。


ワクワクとドキドキが止まらなかった。


そして、着替え終わって鞭と蝋燭を持って勢い良くトイレから出た!


「女王様とお呼び!」


鞭を床に叩きつけて大声で叫んだ!


だがしかし、私の声は店内に流れている音楽の大音量で掻き消され、数人の情熱の国のダンサーは、振り向いてくれたのだが、大半はノーリアクションで踊り続けていた。


ショック!!!


それもそのはず、ビキニ姿をはじめ限りなく裸に近い仮装をしたダンサー達が、ゴロゴロいたからなのであった。


極めつけは、ジャングルの原住民の仮装をしたダンサーだった。


裸に股間ケースを一つ付けただけの姿なのだ。


勝てる訳がない。


幾ら私が、恥を忍んで渾身のSMの女王様に扮しても弱過ぎる…………。


女王様キャラが弱いってどう言う事?


本来なら、SMの女王様の格好をした事が恥ずかしいのだが、たいした仮装ではなかった事が恥ずかしくなった。


ん? どう言う事? 店内に居ると自分でも恥ずかしいと言う意味が良く分からなくなってきた。


変な感情が入り乱れて自己崩壊しそうなので、早く強いお酒が呑みたくなった。


慣れない女王様使用のハイヒールを脱ぎ捨て、カウンターに座ってこの店に置いてある一番強いお酒をオーダーした。


私の意気消沈している姿を見て、仲の良い同じパレードダンサーが横に座って耳打ちをしてきた。


「あの女性ダンサーのお尻に入っているタットゥを拝む事が出来れば、良い事が訪れるって噂だよ」


「えぇぇっ! 本当に?」


ちなみに、あの女性ダンサーとはパッション村の中で、一番人気のある絶世の美女ダンサーの事であった。


私は、血迷ったのか?


それとも強いお酒のせいなのか?


はたまた、渾身のSMの女王様の仮装が不発に終わったからなのか?


何故か躍起になり、絶世の美女ダンサーのお尻に入っているタットゥを拝む事だけに的を絞り専念して、全身全霊で取り組む事にした!

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