第42話
ある日のパレードの時、ずっと私についてくる人物がいた。
ファンかな位で、あまり気にしなかったのだがーーーー。
始めは手を振ってくる程度だったのが、お客様と一緒にダンスをする場面で遂に近づいてきた。
しかも、喋りかけてきたではないか!
「おい! 直!」
「えっ! その声は兄貴!?」
会わない間に随分と様変わりしていたので、ぱっと見分からなかった。
しかも、白縁の変なメガネをかけているし。
「探しまくって原始時代村にも行ったけど、辞めたって聞いたから」
「よく、ここが分かったね」
「原始時代村の忍者が、教えてくれたよ」
「仲間からの留守番電話、その連絡だったのか」
「確かに、連絡しておいてくれるって言ってたよ」
「それで、何しにきたの?」
「大事な報告をしにきた」
「親父の居場所でも分かったのか?」
「そんな事じゃない」
「じゃあ何?」
「俺、結婚したんだよ!」
「あの彼女と?」
「あいつとは離婚した」
「はあ? 意味が全く分からないんだけど」
「だから、二回目の結婚を報告しにきたの!」
「一回目は、報告なかったのに?」
「すまん、すまん、あの時は何かとバタバタしていたから」
これ、喫茶店や居酒屋での会話ではないですからね!
パレードの真っ最中ですからね!
ちなみに、私は仕事中ですからね!!!
「おめでとう!」
とりあえず、大人の対応をした。
「ありがとう!」
「お祝い金とかないけど、ごめん」
「そんなのいらん、いらん、元気そうな顔見れただけで充分だよ!」
「だったら子供が出来た時は、お祝いさせて貰うよ」
「おう! その時は宜しく!」
この一連の会話をお客様と一緒にダンスをする場面でダンスをしながら交わした。
私は、しっかり仕事をした。
「じゃあ、元気でな!」
「兄貴もな!」
兄貴と一緒にダンスをするのは、これが最初で最後になるだろう…………。
兄貴、結構ダンス上手かったなぁ。
子供の頃、おねしょをしていたとはとても思えないほどの腰つきだったなぁ。
まぁ、昔から運動神経は良かったからなぁ。
私は、中学生の頃に部活で器械体操をしていたから、バク転が出来るようになったのだけど、兄貴は小学三年生の頃に自己流でバク転をしていたのを思い出した。
中学生の部活でも、陸上部で良く大会で優勝してメダルと表彰状を家に持って帰ってきていたなぁ。
同級生の女の子にもモテモテで、郵便ポストにラブレターが良く入っていたなぁ。
日曜日には、いつも女の子が三、四人家に遊びにきていたし。
私も兄貴の弟と言うだけで、仲間に入れてもらい良く遊んで貰った記憶がある。
今日は、そんな兄貴からパレードの真っ最中に結婚の報告を受けた。
しかも、二回目の。
何か良い事あるかなぁ。
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