第41話
パレードを観た情熱の国からやって来た、ボーイッシュでショートカットの可愛い女性パフォーマーから、アクロバットを教えて欲しいと言われた。
私は、断わる理由もないので二つ返事でオッケーを出した。
片言の日本語を駆使して頑張って喋ってくる姿が、何とも健気で愛らしく思えた。
しかも、素直で真面目に取り組む姿勢も凄く好感が持てる。
ストライク!!!
私は、一目惚れをした!
たまにミスをした時に舌を出す仕草が、総合演出家の外国人通訳の方が誤魔化す時に舌を出すのとでは、正反対の感情を抱いてしまう程にーーーー。
キュンキュンする!!!
(か、可愛い!)
外見がタイプでドストライクな上に、中身の健気で素直な頑張り屋さんな所も好き。
私は、顔を赤らめドキドキしながら、アクロバットの指導に努めた。
アクロバットの補助をする時に、身体に触れるのだが緊張のあまり手汗がびっちょり。
恥ずかしいので気付かれないように、平常心を保とうとしても本能が言う事を聞いてくれない…………。
猫なで声になり、終始ニヤケ顔で照れながらのアクロバット指導。
第三者には、デレデレしてだらしのない間抜けな姿に写っているのかもしれないが…………。
この際、そんな事はどうでも良い。
なりふり構わず突っ走る!
これが“恋”と言うものでしょうか?
こんな幸せな時間ありますか?
私は、天にも昇る気持ちだった。
ああぁ………… 私は、後悔をした…………。
せっかくチケット制にまでしてくれた、スタッフの方の情熱の国の言葉のレッスンを断わった事を…………。
情熱の国の言葉で話したい。
そして、今の私の燃えたぎる気持ちを情熱的に伝えたい!
目先の損得に捕らわれて、人として大切な本分を忘れてしまっていたのかもしれない。
自己投資は、しておくべきだなと痛感した。
そして、胸の高鳴りを抑えつつ、少しブレイクタイムをとる事にした。
小一時間受けたレッスンを思い出し、ありったけの知識を絞り出し、ボディーランゲージを交えて片言の情熱の国の言葉でコミュニケーションをとった。
その様子が、滑稽に見えて笑っているのか真相は、分からないが兎に角、良く笑ってくれる。
誰に何と言われようと愛想笑いでも嬉しい。
しかも、得意の子猫の鳴き声の真似を披露してくれた時は、正直ヤバ過ぎて変な声が出そうになった。
(か、か、可愛い過ぎる!)
“恋”と言う沼にハマってしまったのでしょうか?
もう、後戻りは出来ない。
いや、したくない!
“恋”とは正気を狂わせてしまうのでしょうか?
正気を保つ事が難しくなってきた私は遂にーーーー。
この気持ちを伝えようと告白に踏み切った!!!
その瞬間ーーーー。
情熱の国からやって来た男性パフォーマーが割って入ってきた!
そして、私の子猫ちゃんと情熱の国の言葉で何やら話し合いを始めた。
話し合いが終わったと思ったらすぐーーーー。
子猫ちゃんに、片言の日本語で私のボーイフレンドだと紹介された。
「…………」
アウト!!!
一目惚れから、僅か四十五分で失恋をした。
子猫ちゃんは、ボーイフレンドにもアクロバットを教えて欲しいと言ってきた。
私は、断わる理由が出来たが、迷いに迷った挙げ句にオッケーを出した。
僅か四十五分の間に未練が芽生えたのか…………。
故に、感情が高ぶって涙ぐんでしまった。
私は、涙目で涙声になりながら二人にアクロバットを指導した。
失恋は、人を強くしてくれるのでしょうか?
自問自答を心の中で繰り返しながら、悲しいアクロバット指導は続くのであった…………。
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