第二章
第40話
一抹の不安はあるもののーーーー。
こうして、パッション村で働きながら無事に二つ目の“アレ”を探す為の第一歩を踏み出す事に成功した。
相変わらず、振り付け師兼演出家のもっと“カマっぽく”と言う演出の意味が全く持って理解出来ないまま、ダンスの振り付けは覚えた。
そして、迎えたパレードの全体練習。
この時に、初めて総合演出家がいると言う事を知った。
しかし、情熱の国の言葉を話しているので、これまた理解出来ない。
と思ったら、横に通訳の方がいたので少し安心した。
のも束の間、重大な問題があった。
情熱の国の言葉を英語圏の外国人通訳の方が日本語にするので、とてもたどたどしくぎこちない。
しかも、聞き取りにくい。
それでいて時々英語が混じったり、分からない言葉は訳さなかったりする。
結構な長文も訳さない時がある。
そんな時は、舌を出して照れ笑いをし誤魔化すが誤魔化しきれていない…………。
ちゃんと仕事して下さい!
だから、もう雰囲気で感じ取るしかなさそうだ。
一通り全体練習を見た後、一人一人に声をかける総合演出家。
そして、私の近くまでやってきて、私の顔を見るなりーーーー。
「ビエン! ビエン! ビエン!」
と声をかけてきた。
流石は総合演出家! 侮れない!
何故、私が“鼻炎”だと知っているのか!
しかも、三回も繰り返すとは! 恐るべし!
そう、私は何を隠そう重度の鼻炎なのです。
総合演出家は、私の鼻炎を言い当てただけでパフォーマンスには、一切触れずに次のダンサーに声をかけていた。
後から聞いたのだが、ビエンは鼻炎ではなく、情熱の国の言葉で“Bien”と言って英語のGood と同意語らしいのだ。
従って、総合演出家は私に“良い”を連発していたと言う事になる。
って言うか! この際、英語でも良いので通訳しろって話しですよ!
本当に頼むから仕事して下さい!!!
まあ、こんな事があったからではないけどスタッフの中に、たまたま情熱の国の言葉を話せる方がいたので教えて貰う事にした。
挨拶や感謝の言葉など、小一時間位教えて貰った。
「はい、三千五百円ね!」
レッスン料と称してお金を請求された。
ちゃっかりしてますね。
高いのか? 安いのか? 全く相場が分からないが、こんな事で揉めたくないので渋々とりあえず支払う事にした。
なるほど………… 私の考えと話しの詰めの脇が甘かった…………。
スタッフの方は、上機嫌でーーーー。
「今度からチケット制にする?」
と言ってきたが、丁重に断った。
“アレ”を買う為に出費は極力抑えないといけないので。
このスタッフの方は、間違いなく仕事にしようとしていた。
この貪欲で、しっかりした仕事ぶりを総合演出家の外国人通訳の方に教えてあげたい…………。
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