第37話
三ヶ月に渡ったキャンペーン活動も無事に終える事が出来た。
色々あったが、良い経験が積めたと言う事で…………。
原始時代村に戻り、最初に感じた事はーーーー。
ショーの最中に犬の鳴き声が、うるさいと言う事だった。
ペット同伴でドッグランを併設したから、しょうがないのかも知れないが、全くとんでもない事をしてくれたものだ!
何故なら、私は犬が苦手だから。
高校時代の冬休みに郵便配達のアルバイトをしていた時に、配達先の家のポストの前に犬小屋があったのだが、気付かずに年賀状をポスティングしたら、足をガブリと噛まれた苦い経験がキッカケになり、犬を見るとあの時の噛まれた痛さを思い出してしまうからなのだ…………。
益々辞める決意が固まった。
辞める理由は決まっているのだが、それはあくまでも本音なので、建前の理由を考えなければならない。
ぼーーーーと考えていたら、突然統括マネージャーに呼び出された。
何か怒られるような事をしたかなぁ。
胸に手を当てて色々考えてはみたが、何も思い当たる節がない。
では何だろう? もう一度キャンペーンに行ってくれなんて言われたらどうしよう…………。
良くない事を考えながら事務所に向かった。
すると、事務所の前に仲間達が並んで何やら順番待ちをしていた。
事務所から、ガッツポーズをしながら出てくる者もいれば、落ち込んで出てくる者もいる。
そうか! 年に一度行われる契約公開の日なのだった!
噂には聞いていたが、始めての契約公開だ。
少しワクワクしてきた。
基本的には、提示された金額を有無を言わずサインをするだけの事らしいのだが。
やっと私の順番がやってきた。
私は、提示された金額を見て驚いた!
倍以上になっていた!!!
凄く嬉しい!
まぁ、スタートの金額が低すぎるので余計にそう感じるのかもしれないが。
スポーツトレーナーの時は、昇給してもせいぜいたかが知れていたので。
何でもキャンペーン活動の功績が大きな理由らしい。
しかも、一人前のアクション俳優と認められたので、危険手当てが付くようになった。
天井からロープスライダーで降りれば、一回に付き三百円。
ミニトランポリンを踏んで宙返りをすれば、一回に付き三百円。
私の演じている忍者のポジションでは、一回のショーの中でロープスライダーを一回、ミニトランポリンは二回踏むので、三百円×三回で九百円になる。
しかも、一日に八回もショーがあるので、九百円×八回で七千二百円になる。
危険手当てだけで、契約公開前の日給を軽く超えている。
アクション俳優は、一人前になると稼げる。
今までの苦労が、少し報われた気がした。
お金と仕事だけで言えば、このまま原始時代村で働き続けたいのだが、今の私には“アレ”を七つ集めると言う目標があるので諦めるしかなさそうだ。
致し方がない…………。
漢にとって仕事は大事、人生そのもの。
従ってーーーー。
生きる為に仕事をするのか?
仕事の為に生きるのか?
今の私はどちらでもない。
”アレ“を七つ集める為に仕事をするのだから。
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