第34話
おねえちゃんのお店を出て、一足先にホテルに着いた私は、お酒を買い込んで独りで呑み直していた。
数時間後、仲間達もホテルに戻ってきたので、一緒に呑む事にした。
「さっきは、ごめん…………」
「個人的なわがままで先に店を出て…………」
私は、とりあえず仲間達に謝った。
しかし、仲間達は微塵も気にしていなかった。
私が、店を出た後もお金にものを言わせ、おねえちゃん達をハベラかせてメチャクチャ楽しんでいたようだ。
ある意味現金な仲間達で良かった。
せっかく五人揃っているので気になっていた事を聞いてみた。
「最近、真夜中に奇妙な声が聞こえるのだけど、皆は聞こえない?」
するとーーーー。
「ぶっちゃけると、真夜中にお経が聞こえてきて怖くて眠むれないんだよ」
と、いつも眉間にしわが寄っている者が言い出した。
「えっ! 俺もなんだけど!?」
と口々に皆言い出した。
「ごめん…………」
と、いつも独り言を言っている者が謝ってきた。
「実は、これ読んだらハマっちゃって…………」
と言って、居酒屋で中年夫婦に貰った『信仰と私』の本を見せてきた。
「ほら俺、兄弟も両親も居ないし天涯孤独だから………… “心の拠り所”と言うか…………」
「別に信仰するのは否定しないし、本人の自由だからさ」
「でも、よりによって真夜中にお経をあげなくても良くない?」
いつも眉間にしわが寄っている者が、更にしわを寄せて詰め寄った。
「そうだね………… 今度から気を付けるよ」
「皆、本当にごめん!」
まぁ、お経の怪騒動の原因も分かった事だし、今度から気を付けてくれると言うので、安心して眠れる事になった。
そして、次の日の朝を迎えた。
「確かに真夜中じゃなかったけど、早朝もやめてくれ!」
いつも眉間にしわが寄っている者が、いつも独り言を言っている者に、また詰め寄っていた。
「じゃあ、どうしたらいいんだよ!」
逆ギレをするいつも独り言を言っている者。
真夜中はダメ、早朝もダメ、かと言って変な時間帯やタイミングも困る。
と言う事を踏まえて、逆立ちしたら名案が閃いた!
皆の平均起床時間は、だいたい午前七時頃なので、その時間のタイミングでお経をあげて貰う。
そうすれば、お経が目覚まし時計代わりになって起きる事が出来ると言う訳なのだ。
皆も私の意見に賛同してくれた。
これで、いつも独り言を言っている者は心置き無くお経をあげる事が出来るし、私達も心地良い目覚めとは、ならないが起きる事が出来るので遅刻をしなくてすむ。
これぞ正に“Win-Win”ではないだろうか!!!
ちなみに、いつも独り言を言っている者には、個人的に信仰するのは自由だけど、人間関係が縺れる原因に成りかねないので、キャンペーン活動中に仲間達を勧誘しないと言う約束だけはかわさせて貰った。
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