第32話

滞在しているホテルに戻ったら早速、電話をかけて会う約束をした。


私達は、五人で待合せ場所に出向いた。


逆に、二人組の綺麗な御姉様が戸惑っていた。


何故なら、忍者姿の私達しか知らないからであった。


ナンパされたかと思ったらしい。


とりあえず、立ち話もあれなので居酒屋に入る事にした。


二人組の綺麗な御姉様が、お酌をしてくれるのでお酒が更に美味しく感じてしまう。


しかも、聞き上手で会話が楽しい。


アクション俳優の苦労話を引き出すのが、実に上手い。


まるで、悩み事相談を受けているのかと勘違いしてしまう程に。


酔いも随分まわってきた頃ーーーー。


待合せした時から気になっていた、二人組の綺麗な御姉様が持っていた大きな鞄から、何やら取り出しテーブルの上に並べ始めた。


そして、一つずつ手に取り説明をし始めた。


「これが、疲労回復に良く聞くサプリメント」


「アクション俳優は、身体が資本でしょ!」


「これを飲めば、疲れの原因の乳酸が分解されるのよ」


「三十錠入った小瓶で一万円」


「そして、これが二日酔いに効く飴」


「どれだけ飲み過ぎても、これを舐めれば次の日に残らないのよ」


「ちなみに、飲酒運転をしていてもこれを舐めればアルコール検査に反応が出ないの」


「十個で五千円」


「それから、これが眠気をスキッリ解消してくれるラムネ」


「二、三日徹夜しても平気なのよ」


「これも十個で五千円」


「で、これが一番のオススメなんだけど、老化の原因になる活性化酸素を抑制するタブレット」


「アクション俳優の選手生命が、延びるわよ!」


「本当は三十錠で三万円なんだけど、今日だけ特別割り引きで二万円」


(やっぱり………… そう言う事か…………)


私達は顔を見合せて悟った。


そこで、いつも独り言を言っている者が、隠し持っていた原始時代村のパンフレットを取り出して話し始めた。


「この忍者Tシャツが、フリーサイズで二千五百円」


「そして、この原始人キーホルダーが五百円」


「オモチャの石斧と忍者刀が、それぞれ千五百円」


「これが、一番のオススメの原始人のコスプレ衣裳」


「本当は、五千円なんだけど二人共似合いそうなので特別に三千円」


「…………」


二人組の綺麗な御姉様は、無言になりテーブルに広げたものを鞄に仕舞い込んで、用事を思い出したと言って帰って行った。


忍法“押し売り返し”!!!


私達は、呑み直す事にした。


隣の席で、やり取りの一部始終を聞いていたと言う大学生のサークルグループが話しかけてきた。


「あのーーーー 大変でしたね」


「まぁね…………」


「僕達、“ウルトラフリー”と言うサークル仲間なんですけど、良かったらウチのサークルに入りませんか?」


「大学生でもないし、部外者でも入れるの?」


「全然大丈夫ですよ! ウチのサークルは誰でも入れるのが売りですから!」


「そうなんだ!」


「あっ! でも、一つだけ約束事がありますが、それ以外は何でも有りなので」


私達は、大学生の怪しい話しを聞いているうちに悟った。


そして、逆にアクション俳優が足りていないので、大学生達を原始時代村に来ないかと誘った。


十キロマラソンや地獄の筋トレの事、低賃金での過酷な仕事内容を包み隠さず話した。


すると、大学生達はこれから“ウルトラフリー”のイベントがあるのでと言って足早に店を出て行った。


忍法“勧誘返し”!!!


気を取り直して、また呑み直す事にした。


その一部始終を聞いていたと言う中年の夫婦が、話しかけてきた。


そして、原始時代村に興味を示して来たので、チャンスとばかりにこれまた隠し持っていたチラシを渡した。


私達は、プライベートでも原始時代村のキャンペーンに尽力した。


これが、給料に反映されれば嬉しいのだが。


キャンペーン手当てを貰っているから、まぁいいか。


キャンペーン活動も成功し、楽しく呑めたので満足して店を出ようとしたら。


中年夫婦が別れ際にーーーー。


「はい、これ読んでね」


と、本を私達に一冊ずつ手渡してきた。


『信仰と私』と言うタイトルの…………。


私は心に誓った!


忍法“本返し”が使えるようにーーーー。


将来、絶対に小説を書いて本を出版しようと!!!

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