第28話

オープンして三ヶ月が経った頃、夏に突入して暑さも手伝ってか日頃の疲れも溜まって疲労困憊状態に。


怪我の治りも遅く、筋肉痛も長引く…………。


劇場の中は、これでもかと言う位に鎮痛消炎冷却スプレーの匂いが充満していた。


目がしばしばするのは、サリチル酸グリコールのせいか。


そんな状態の最中ーーーー。


その日の最後の八回目のショーが終わった時、主役を演じる原始人役のお風呂で体毛を剃るほど毛深い者が、突然キレ出した!


理由は、忍者が一人多かったと。


舞台の出面は、原始人が三人で忍者が十人の合計十三人。


忍者は、実際には十人しかいないのだが、沢山いるように見せかける為に殺されては舞台袖に捌けて、舞台裏を通って違う場所から登場して、また殺されてを何度も繰り返す。


そして、殺陣は決まっているので予定外の場所から登場したりはしない。


故に、殺される回数も決まっている。


最後の殺陣も派手に見せる為に、舞台上には原始人の三人と忍者の十人の十三人全員が乱れて殺陣をする。


その時に、忍者が一人多かったと言うのだ。


ストーリー上の最後に殺した忍者の後に、斬りかかってきた忍者がいたと言うのだ。


しかし、最後は舞台袖に捌ける事なく舞台上で忍者の十人は倒れているので、ありえないのだが…………。


疲れが原因で幻覚を見たのか、謎は深まる。


しかも、お風呂で体毛を剃るほど毛深い者は、頑なに意見を曲げない。


その後も、忍者が一人多いと言う謎の怪現象が頻繁に起こるものだから、お風呂で体毛を剃るほど毛深い者のイライラとフラストレーションは限界に達してーーーー。


いつもなら、言わない事でも言い始めるようになって、少し殺陣のタイミングが違うなど、忍者役のお風呂で体毛を剃るほど毛深い者より更に毛深い者にクレームをつけ出した。


言われたお風呂で体毛を剃るほど毛深い者より更に毛深い者も、素直に非を認めれば良いものを色々言い訳をするものだから、小競り合いから喧嘩に発展してしまった。


最初に手を出したのは、お風呂で体毛を剃るほど毛深い者だった。


反撃に出たお風呂で体毛を剃るほど毛深い者より更に毛深い者の左ストレートが、もろにお風呂で体毛を剃るほど毛深い者の右頬に当たった。


お風呂で体毛を剃るほど毛深い者の右頬が切れ、顔の右半分が血だらけに…………。


更に、たまたま近くに置いてあった牛乳パックを投げつけた。


見事に左頬に命中して牛乳が飛び散った!


お風呂で体毛を剃るほど毛深い者の顔はーーーー。


右半分は血で染まり真っ赤になり、左半分は牛乳で白く染まった!


その段階になってから、皆で喧嘩の仲裁に入った事によりーーーー。


『お風呂で体毛を剃るほど毛深い者VSお風呂で体毛を剃るほど毛深い者より更に毛深い者』は終わった。


この別名“体毛の乱”の後、お風呂で体毛を剃るほど毛深い者より更に毛深い者を怒らせるとーーーー。


顔面を紅白にされると恐れられるようになったとかならなかったとか…………。


ちなみに、あの牛乳パックはショーが終わった後に飲もうとして置いてあった私のものなんだけど…………。

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