第26話
原始時代村は、その名前の通り原始時代がモチーフになっているテーマパークなのだがーーーー。
子供達を呼ぶ事が出来れば、おのずと親達も来るので集客に繋がると言う考えから、運営幹部会議で“忍者”を登場させる事に決定したようなのだ!
原始人を見に来る子供達なんかいないと…………。
子供達に人気と言えば“忍者”だと言う安易な発想らしい。
原始時代村を作る前に気づきそうなものだが、どこに勝ち目を見出だそうとしたのやら…………。
まぁ、その根本的な疑問はさて置き。
そんなこんなで無理矢理“忍者”をアクションショーに組み込ませる為、台本が書き直される事になった。
しかも、これがオープン三日前なのだから先が思いやられる…………。
出来上がった台本に目を通したら、原始時代に当然“忍者”が存在する訳がないので、そこは流石にSFになっていた。
タイムマシーンで未来からやって来た“忍者”が、七つの大陸に住む原始人が、それぞれ守り神として祭っている大切な“神器”を奪いに来たと言う設定。
ちなみに、どうして未来から奪いにきたのか詳しい理由は描かれていなかったが。
ただ単に忍者を登場させる為に、取って付けたような台本になっていた。
七つのと言うあたりの内容とかが、なんだか私の“家宝探し”と似ているのは気のせいか…………。
でも、私は得意のアクロバットが買われ、嬉しい事に原始人の“ドテカマゴン”ではなく、未来から来た忍者になる事が出来た。
テーマパーク的には、原始人が主役なので複雑だけど、格好良い忍者の方がやりたいので結果オーライ!
しかし、せっかく忍者になれたのに私だけ武器が“鎖鎌”ってーーーー。
ここまでカマキリ拳法の影響で“鎌”が繋がると悪意を感じてしまう…………。
そして、迎えたオープン当日。
四十五分間の『原始人VS忍者』の芝居仕立てのアクションショーが、一日に八回行われるのだ。
特に忍者は、舞台の天井からロープスライダーで降りてきたり、舞台の下からミニトランポリンを踏んで飛び出てきたり、上手から下手から客席の後ろからと、ありとあらゆる場所から登場しては殺されてを何回も繰り返すので舞台の裏は、もう運動会で大変極まりなかった。
でも、やりがいはあった。
何故なら、ショーが終わった後の写真撮影では、列が出来る程の人気だったからだ。
しかし、調子に乗っていつまでも写真撮影に付き合ってはいられないのだ。
次のショーの準備をしなければならない。
天井から降りるロープのセッティングをして、舞台装置の点検と安全確認をして、火薬やスモークなどの特殊効果を設置して、壊れた武器の補修をして、メイクを直しながら汗だくになった衣装をスペアの衣装に着替える。
この工程を十五分間でやり終えなければならない。
忍者は、休んでいる暇などないのだ。
これを一日に八回! ゴールデンウィークやお盆や年末年始は営業時間が長いので十回!!!
アクション俳優の体力は半端じゃない。
毎日の十キロマラソンで持久力をつけて、何百回も行う筋トレ地獄で筋力をつけて、柔軟体操で身体の可動域を広げ怪我を防止して、厳しいアクションの練習で技術を身につけたからこそ“成せる技”なのだ。
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