第25話
待ちに待った原始時代村のオーブンまでーーーー。
遂に一週間を切った。
メインイベントのアクションショーも、演出に磨きがかかり仕上がっていた。
私達も晴れてアクション俳優デビューとなる訳なのだ。
思い起こせば半年近く、このオープンに向けて地獄の練習に耐えてきた。
やっと報われる日がやってきたのだ。
辞めていく者と入ってくる者が幾度となく繰り返され、結局残ったのは…………。
今になって、オーディションでの即決合格の理由が少し分かったような気がした…………。
何はともあれ、住む場所探しから始まりアクション俳優デビュー間近まで辿り着き、家宝の謎を解くと言う人生の目標を持つところまで来た。
のらりくらりと生きてきた私の人生が、変わろうとしていた。
今が転換期なのかもしれない。
そんな時ーーーー。
オープン前に、原始時代村の宣伝を兼ねて地元の保育園や老人ホームなどを回るイベントが行われる事になった。
初めて人前に立つのだから、緊張してドキドキが止まらない。
そして、迎えたイベントの日。
最初に向かったのは老人ホームでした。
少し緊張したが、意外に淡々とこなし無事に初御披露目が終わった。
初めての割には、怪我人も出ず失敗もしなかったので我ながら上出来だと思った。
PV撮影でのハチャメチャな出来事が、教訓になり今に生かされているのだろう。
ショーが終わって後片付けをしていたらーーーー。
車椅子に乗った老人が、近づいて来てこう言った。
「ネアンデルタール人と北京原人のどっちじゃ?」
「ん?」
私は即答出来なかった…………。
身体を鍛え、アクションの練習ばかりして肝心な“テーマ”である原始人を全く理解していなかった。
そもそも漠然と原始人を演じていただけで、役作りもクソもなかった。
筋肉を見せて、石鎌でひたすら暴れ回ってアクロバットをする原始人で台詞も一言。
「うぽぽっ ヘペぷっ むばっか」
って言うだけで、役名は“ドテカマゴン”だから。
筋肉馬鹿と言われても仕方ないか…………。
こちらの様子を伺っていた原始時代村の統括マネージャーに全て丸投げして、あとの説明は任せる事にした。
続いて向かったのは保育園。
もう、二回目なので初回よりも少し余裕を持ってショーに挑めた。
しかし、ショーの完成度とは裏腹に思ったよりも子供達に人気がなかった。
盛り上がったのは、アクロバットを披露した時くらいかな…………。
その後も、幾つか保育園や幼稚園を回ったが結果は同じ。
子供達には不人気…………。
写真撮影でもあまり寄ってこない。
やっぱり原始人はダサいのか。
今日のイベントの一部始終を同伴して見てきた原始時代村の統括マネージャーは、頭をかかえていた。
このままオープンを迎えても、果たしてお客さんが入るのかと。
そこで、原始時代村の運営幹部達による緊急会議が行われて出された決断がーーーー。
テーマパークの概念を根底から覆すような答えだった!!!
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