第24話

「おはようございます!」


私達は、揃って挨拶をした。


罰悪そうに振り向いた方はーーーー。


「おう! お前達、どうしたこんな所で?」


アクション講師であった。


いやいやいや、それはこっちの台詞だよと思いつつ歩み寄った。


「講師もご覧になったのですか?」


「あっあぁ…………」


「あの3D映画どうでした?」


「あっあれな! 知り合いが出演していてビックリしたよ!」


「えっ!?」


凄まじく驚愕した。


アクション俳優の仕事って幅が広いのだなぁと身の振り方を考えようとした私であった…………。


とその時ーーーー。


ドンッ!!!


「邪魔だ! どけ!」


地元の輩達が肩をぶつけてきた。


「うるせぇ! この野郎!」


私達も負けじとかました。


「上等じゃ! やんのか! こら!」


輩達は明らかに喧嘩を売ってくる態度だった。


日頃から命を張って厳しい練習をこなしている私達に、怖いものはなかった。


臨戦態勢に入った私達を遮るようにして、アクション講師が割って入ってきた。


「待て! お前達は手を出すな!」


「だってこいつらが先に!」


「お前達には未来がある! ここは俺にまかせろ!」


「でも…………」


「グダグダ言ってんじゃねーーーー!」


次々と殴りかかってくる輩達を紙一重で、かわすアクション講師。


まるで綺麗な殺陣を魅せられているかのように見事に立ち回る。


それもそのはず、アクション講師は古武道の達人で師範代の腕前。


ちなみに、古武道とは生死をかけた戦闘においての武技から誕生し発展した日本伝統の武術だと言われている。


故に、喧嘩慣れした素人が勝てる相手ではない。


しかも、輩の攻撃をかわすだけで反撃はしていない。


私達は、安心して見守っている事が出来た。


しかし、輩達も攻撃が全く当たらず子供のようにあしらわれると、喧嘩慣れしたプライドが傷付いたのかーーーー。


5人いた輩達が、周りを囲み四方八方から一斉にタックル攻撃に出た。


流石に避けきれず、倒されてしまった。


ここぞとばかりに、一気に攻撃を畳み込む輩達。


それを見て私達が駆け寄ろうとしたがーーーー。


「来るなーーーー!」


アクション講師は私達に叫んだ。


「っつ…………!!!」


確かに、ここで私達が手出しをしたら、今までのアクション講師の行動が全て無駄になってしまう…………。


地団駄を踏む私達。


とそこへーーーー。


パトカーのサイレンが木霊した。


「警察が来たわよーーーー!!!」


「くそが! 行くぞ!」


輩達は即座に逃げ去って行った。


「大丈夫?」


声をかけてきたのは、メインイベントで軽快な状況アナウンスをしていた年配の女性だった。


「あれ? 警察は?」


私達が問いかけた。


「あーーあ、あのサイレンね、防犯用のオモチャよ」


おなどれない“大人のテーマパーク”だ!


大人のオモチャから防犯用のオモチャまであるとは…………。


私は少し感動した。


そんな感情のまま、アクション講師に駆け寄った。


私達を守ってくれた事には感謝をするが、古武道の師範代がその姿はないだろう…………。


目がうつろで服がビリビリに破れ、口が切れて血を流した状態だった。


私は、失礼は承知の上で悔しさのあまりーーーー。


「何故、避けるばかりで反撃しなかったのですか?!」


と強めの言葉を投げ掛けた!


するとーーーー。


「俺が手を出す時は…………」


「相手を殺す時だ!!!」


一瞬、背筋がゾクッとした。


動物の本能で悟った。


この時のアクション講師の目は本物だった。


命を張り、極限までに精神と肉体を鍛えている者には分かる。


この方を本気で怒らせてはいけないと…………。

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