第14話

お風呂から上がり、ロビーで寛いでいるとーーーー。


やけに女子寮の方が騒がしい、一体どうしたと言うのだ。


近くで新聞を読んでいた色々な噂に詳しい、顔にたくさんホクロがある者に聞いてみた。


「ねぇ、何かあったの?」


「女子寮に幽霊が出たらしいよ」


「本当に?」


「誰もいないのに足音がしたり、うめき声や物音が聞こえてくるんだって」


「冗談だろ?」


「いや、確かに複数の女子達にそう聞いたよ」


「何かの勘違いじゃないのかな」


「それが原因で寝不足になり、目の下にクマを作っている女子が多いようだし」


「…………」


「ちなみに、男子寮は元々ビジネスホテルだったけど、女子寮は隣の空き地に新しく建立されたんだってさ」


「もしかして、建てている時に工事の人が亡くなったとか」


「それ、あり得るね」


「それとも、空き地になる前は墓地だったとか」


「それも、充分あり得る」


真相はいかに…………。


管理部から緊急業務連絡が入った。


これから道場に集合との事。


何だろう? こんな時間に。


とりあえず、原始時代村行きのシャトルバスが、迎えに来たので乗り込み道場に向かった。


道場に着くと、普段見慣れないスーツを着た方達が入り口で整列していた。


道場の中も普段は、マットが敷き詰められているのに片付けられ、パイプ椅子が綺麗に並べられていた。


「順番に奥から詰めて座るように!」


アクション講師が道場内整理をしていた。


私も促されるままパイプ椅子に座った。


「よし! これで全員揃ったな!」


アクション講師が、外にいるスーツを着た方達にサインを送った。


そして、奥から数人の取り巻きを連れて入ってきた人物こそがーーーー。


オーディションの時の“鶴の一声”の方だった。


「起立! 礼! 着席!」


アクション講師の号令で、一糸乱れぬ動きを見せる一同。


「これより、村長から皆にお話があるので心して聞くように」


「では、村長! 宜しくお願いします」


鶴の一声の方は、原始時代村では村長と呼ばれているようだ。


村長は、いきなりーーーー。


「皆! スターになりたいか!」


大声を張り上げた。


「はい!」


大声で返事をする一同。


「スターになりたい者は手を挙げろ!」


村長が両手を挙げて言った。


私は、呆気に取られた…………。


しかし、周りは皆一斉に両手を挙げた!


すかさず、ワンテンポ遅れて私も挙げた。


何だ! この異様な光景は?!


村長が来ると、必ずやる恒例のやり取りらしい。


「この世の中に幽霊などいない!」


「もし、いても怖くない!」


「怖いのは貧乏と精神異常者だ!」


「以上!!!」


村長の話しが終わった。


(何気に凄い事を言っているなぁ…………)


そして、直ぐ様取り巻きと共に道場をあとにした。


「それでは、解散!」


アクション講師が皆に指示した。


(えっ? たったこの為だけに夜中に呼び出されたのかよ…………)


私は釈然としなかった。


結局、お祓いをしたり盛り塩や御札を至るところに貼りまくったり、思い付くあらゆる除霊を行っていつの間にか幽霊騒動は収束したのでした。

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