第13話
次の日、原始時代村の管理部から業務連絡が届いた。
内容は、自分のアクションの動きなどをチェックする為に、貸し出して貰えるビデオカメラが返却されず紛失しているとの事でした。
ちなみに、借りる時には日付けと時間と名前を記入シートに書く事が、原則として義務付けられているのだが。
記入シートに書き忘れて、まだ借りたままになっているのかな?
それとも本当に盗んだ奴がいるのかな?
結局、管理人さん立ち会いのもとで、寮の部屋を一部屋ずつ調べる事になった。
しかし、全ての部屋を調べたのだが、ビデオカメラは出てこなかった。
もう一度、皆で道場の周りなどを手分けして、くまなく探す事にした。
私が道場の更衣室を探していたらーーーー。
「お前、いい加減にしろよ!」
リーダーの声が聞こえた。
声がした方に駆け寄ったら、リーダーと三日前に入ってきた眉毛の濃い新人が揉めていた。
(もしかして、リーダーの洗礼を受けているのかな…………)
「お前、年幾つだよ!」
リーダーが問いただすとーーーー。
「十八歳…………」
小さな声で眉毛の濃い新人が答えていた。
「どうしたのですか?」
そこに私が割り込んだ。
「こいつが、嘘ばっかりつくからよ!」
リーダーが凄い剣幕で言い放った。
「嘘じゃない…………」
眉毛の濃い新人が、小声で下を向いて言った。
「こいつが、少林寺拳法七段だって言うから、お手並み拝見と言う事で組み手しようぜってなったんだけど断わるんだよ!」
「だってしたくないから…………」
「ほらね、おかしいだろ! 本当に七段だったら受けるだろ!」
「本当に七段だったら強いのでは?」
私も問いかけてみた。
「…………」
無言になる眉毛の濃い新人。
「俺、聞いた事あるんだけど、少林寺拳法って昇段審査の規定が修行年数とか色々あって、確か十八歳だとまだ七段を取る事が出来ないはずなんだよ!」
「そうなの?」
「…………」
「黙ってないで何か答えろよ! このやろう!」
ズドン!!!
「うげぇっ!」
リーダーが、ぶちぎれて眉毛の濃い新人に前蹴りを喰らわした!
ぶっ飛んだ眉毛の濃い新人は、ロッカーにぶち当たり倒れてうずくまった。
その衝撃でロッカーの扉が開いた。
「あった!!!」
私は思わず叫んでしまった。
ロッカーの中からビデオカメラが出てきた。
しかも、眉毛の濃い新人のロッカーの中から。
私が、すかさず問いただしたら借りパクしようとしていたと罪を素直に認めた。
ついでに、少林寺拳法七段も嘘だとあっさり認めた。
まぁ、舐められたくなかったからと言う理由は少し分かるけど、二段位にしておけばよかったのに。
そう言う問題じゃないか…………。
それで眉毛の濃い新人が、何度も何度も土下座をして泣きながら謝罪するので可哀想になり、リーダーと話し合い、この事は内密にしてあげる事にした。
ビデオカメラは、こっそり戻して事なきを得た。
この日の夜、大浴場で眉毛の濃い新人と出くわした。
「今日は色々ありがとう」
照れながら眉毛の濃い新人が言ってきた。
私は、頷いて諭した。
「偉そうな事は言えないけど、虚勢や見栄や意地を張るのやめた方がいいよ」
「どうせばれるのだし、そのままでいいのだよ」
「あと、借りパクは犯罪だからね」
「うん…………」
罰悪そうに頷く眉毛の濃い新人であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます