第12話

寮に戻り、冷静になって考えた。


原始時代村での給料は、日給月給なので日給計算で五千七百九十四円。


月に二十五日働いたとして、十四万四千八百五十円。


そこから、各種保険料や寮費やら諸々引かれるとーーーー。


手取りは、軽く十万円を切ってしまう…………。


更に、食費や小遣いや雑費などを考えると、神社で“アレ”を買う為には相当の月日がかかる。


暫く原始時代村で働いてお金を作るしかなさそうだ…………。


私は、また家宝の木箱から和紙を取り出して広げた。


そして、描かれている日本地図とにらめっこをした。


次の鳥居のマークの位置をチェックする為に。


(ここから一番近い場所が、ここだなぁ)


原始時代村が、日本地図の一番南の方にあるので、北の方に向かって進んで行く計画を立てた。


しかし、原始時代村を拠点にして全国の鳥居のマークを探し出すのはリスクが高過ぎる…………。


何故なら、休みも週に一回取れるかどうかで、ゴールデンウィークやお盆やお正月はテーマパークにとって稼ぎ時な為、休める訳がない。


しかも、連休が取れないので、必然的に泊まりで探す事も出来ない。


そして、探しながらの移動交通費も馬鹿にならないだろう。


(うーん、どうするべきか…………)


そうだ!!!


鳥居のマークの近くで働きながら、探せば良いのか!


しかも、せっかく苦労して身に付けたアクションやエンターテイメントの技術を活かせれば、無駄がなく尚更良い。


だから、鳥居のマークの近くあるテーマパークを探せば良い訳なのだ。


地方のテーマパークであれば、大抵の所は寮付きの社保完備だから。


よし! そうしよう!


人生に何の夢も目的も楽しみも、特に持たずに生きてきた私であったが、初めて目標を持つ事が出来たのかも知れない。


考えるだけで、ワクワクドキドキする。


当然、不安もあるが…………。


これから全国を駆け巡って家宝を探す旅に出る。


まるでロールプレイングゲームの主人公になった気分だ。


日本全国津々浦々に散りばめられた、七つの家宝を探し出してコンプリートして行くのだから。


しかし、七つ集めた先には何があるのだろうか?


まぁ、それが一番の醍醐味だから。


楽しみは最後までとっておく事にしよう。


とりあえず、まだまだ先になるかもしれないけれど、次の鳥居のマークの近くにあるテーマパーク位は探しておかないと。


気持ちが高揚してきて、凄くテンションが上がってきた。


これまでの人生を振り返っても、事なかれ主義の性格もあり、浮き沈みもなく荒波に揉まれる事もなく、ごく普通に過ごしてきたので、こんな感覚は初めてかも。


仕事のスポーツトレーナーも趣味と実益を兼ねて何の目的もなくただやっていただけだし。


目標を持ち計画を立てて行動する事が、こんなに胸が高鳴り踊り熱くなるとは正直思わなかった。


情熱が湧いて興奮してきた!


よし! 絶対七つ集めてーーーー。


その先にあるものを見つけてやるぞ!!!

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